プライミング効果とは?先に触れた情報が後の反応に与える影響

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

たとえば、「鳥」という言葉を見てから「スズメ」という言葉を見るとします。先に意味のない記号を見た場合とは、「スズメ」という言葉を認識する速さが変わるかもしれません。先に触れた情報が、後の反応に関わる可能性を考える例です。

プライミング効果とは、先に見聞きした言葉や形などが、その後に示された情報を認識したり、判断したりするときの反応に影響する現象です。ただし、単語の認識が速くなることと、言葉を見ただけで人の行動が変わることは、研究の確かさを分けて考える必要があります。

プライミング効果とは?先の情報が後の反応に関わる仕組み

心理学の実験では、先に「鳥」と見せ、その後に「スズメ」という言葉を見せる場合と、先に関係のないものを見せる場合を比べることができます。後の言葉に反応するまでの時間などを測ると、先に見たものの影響を調べられます。

このように、言葉の意味につながりがあることで、後の言葉を処理する速さが変わる現象は、プライミング効果の一つです。先に「鳥」という言葉を目にすることで、関連する「スズメ」という言葉の処理が進みやすくなると考えられています。

また、以前に見た言葉や形を、あとで見分けやすくなる現象もプライミングとして研究されてきました。これは、以前の情報を意識して思い出そうとしなくても生じる場合があります。TulvingとSchacter(1990)は、このような認識への影響を、人が過去の出来事を意識して思い出す働きとは分けて説明しています(Tulving & Schacter, 1990)。

一方、「特定の言葉に触れると、その言葉に関係する行動をとるようになる」という研究もあります。言葉の認識を調べた実験とは、測っているものが異なります。

研究で分かっていること

先に関連する単語を見ると、次の単語への反応が速くなった

Neely(1977)は、大学生120人に、先に単語や記号を見せ、そのあとに現れる文字列が実在する英単語かどうかをできるだけ速く判断してもらいました。参加者には、最初の単語によって次に出やすい単語の種類も事前に説明しました。たとえば「BIRD(鳥)」のあとには、鳥の名前が出ることが多いと伝えていました。

たとえば、先に「BIRD(鳥)」を見せ、そのあとに「ROBIN(コマドリ)」を見せる場合と、先に意味のない記号「xxx」を見せてから同じ「ROBIN」を見せる場合を比べました。先の表示を始めてから、次の表示を始めるまでの間隔も変えています。

その結果、先の表示から次の表示まで約2秒ある条件では、「BIRD」のあとに「ROBIN」を見せたほうが、記号「xxx」のあとに見せるより判断が速くなりました(Neely, 1977)。

この条件では、「BIRD」と「ROBIN」の意味のつながりに加えて、鳥の名前が出ると参加者が予想できたことも考慮する必要があります。この比較だけで、本人の予想と関係なく反応が速くなったとは言えません。調べたのは英単語かどうかを判断する速さであり、買い物などの行動ではありません。

言葉への接触で、歩く速さも変わるのか

別の研究分野では、「高齢者」を連想させる言葉に触れると、そのあと歩く速度が遅くなるとする実験が注目されました。

Doyenら(2012)は、この結果を確かめるために二つの実験を行いました。一つ目の実験では、言葉による歩行速度の変化を再現できませんでした。二つ目では、実験を進める人が「参加者はゆっくり歩くはずだ」と予想している条件でのみ、歩く速さへの影響が見られました(Doyenら, 2012)。

つまり、この歩行実験では、先に示された言葉だけでなく、実験を進める人の予想も結果に関わっていた可能性があります。

行動への影響は、研究のまとめ方によって見え方が違う

Daiら(2023)は、先に触れた言葉や考え方がその後の行動に与える影響について、351件の研究をまとめて分析しました。その結果、影響が見られた研究だけが発表されやすい可能性を考慮した分析でも、全体を平均すると行動への影響が見られたと報告しています(Daiら, 2023)。

一方、Mac Giollaら(2024)は、社会的な言葉や考え方への接触が、その後の判断や行動に影響するという研究について、過去の結果を近い条件で確かめ直した70件を分析しました。そのうち、元の研究者を含まない独立したチームによる52件では、元の研究と同じ方向で、偶然のばらつきだけでは説明しにくいと判断された結果は一つもなく、それらの研究をまとめた平均的な影響もほぼゼロでした(Mac Giollaら, 2024)。

Daiらの分析は、さまざまな種類の言葉や考え方が行動に関わるかを幅広くまとめたものです。一方、Mac Giollaらの分析は、社会的な概念を使った研究の結果が、別の研究チームでも再現できるかを調べたものです。扱った研究と確かめたい点が違うため、両方の結果を区別する必要があります。行動への影響を一律に否定することも、特定の言葉で人の行動を確実に変えられると考えることもできません。

身近な場面で考える

たとえば、図鑑の説明で「鳥」という言葉を読んだ直後に、「スズメ」という言葉が別の文章に出てきたとします。先に関連する言葉を見ていたため、「スズメ」という言葉の処理が少し進みやすくなるかもしれません。これは単語を使った研究を日常に置き換えた仮の例であり、実際の読書で必ず速く読めるという意味ではありません。

一方、買い物の前に「節約」という言葉を見たからといって、その人が必ず安い商品を選ぶとは言えません。選択には商品の必要性、価格、好み、予算なども関わるためです。先に見た言葉が人の行動を決めるという主張には、単語の認識とは別の根拠が必要です。

プライミング効果を理解するうえで大切なのは、先に触れた情報が後の反応に関わることがある一方、どんな反応まで変わるかは研究ごとに確かめる必要があるという点です。言葉を認識する速さについての結果を、そのまま日常の意思決定全体に当てはめずに考えると、研究から分かることを正確に理解できます。

参考文献・出典