自己知覚理論とは?自分の行動から気持ちを知るという考え方

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

友人に頼まれたわけでもないのに、週末の読み聞かせ会に何度も参加したとします。あとから自分の行動を振り返り、「私は人に本を読むのが好きなのかもしれない」と気づくことがあります。自分の気持ちを、自分がしたことから知る場合があるのでしょうか。

自己知覚理論とは、自分の気持ちや考えがはっきりしないとき、自分が取った行動と、その行動が起きた状況を手がかりに、自分の態度を推測することがあるという考え方です。自分の行動は気持ちを理解するための材料になりますが、行動だけで本心が決まるという意味ではありません。

自己知覚理論とは?意味と仕組み

心理学者のダリル・ベムは、人が自分の態度や感情を知る際に、自分の行動を外から観察するように見て、その意味を考えることがあると説明しました。特に、自分の気持ちを直接つかむ手がかりが弱かったり、曖昧だったりする場合を重視しています。ここでいう「態度」は、ある活動が好きかどうか、ある考えに賛成かどうかといった受け止め方です。Bem(1972)、アメリカ心理学会(2023)

たとえば、自分が好きな趣味をすでにはっきり自覚しているなら、何を好んでいるかを行動から考え直す必要は小さいでしょう。一方、新しく始めた活動についてまだ好きかどうか分からないなら、「時間があると自分から参加している」という行動を、自分の関心を考える手がかりにするかもしれません。

そのときには、その行動を取った理由をどう考えるかも重要です。自分から進んで参加したなら「関心があるのかもしれない」と推測しやすくても、参加が義務だったり、報酬のためだったりすれば、その行動だけを理由に「自分は好きでやっている」とは判断しにくくなります。自己知覚理論は、行動だけでなく、その場の事情も一緒に考える理論です。

研究で分かっていること

質問で目立たせた過去の行動によって、態度の回答が変わった

SalancikとConway(1975)は、大学生70人に、宗教に関わる過去の行動が自分に当てはまるかを尋ねました。質問の「ときどきする」と「頻繁にする」という表現を使い分け、宗教に肯定的な行動、または否定的な行動を「自分もしている」と答えやすくしました。その後、宗教に対する態度を尋ねました。

その結果、宗教に肯定的な行動が目立つ質問を受けた人は、否定的な行動が目立つ質問を受けた人より、宗教について好意的な態度を示しました。研究者たちは、質問への回答を通じてどのような過去の行動が目立つかが、その場で答える態度に関わると考えました。SalancikとConway(1975)

同じ論文の別の実験では、大学の授業に関する行動を思い出させる方法を使いました。行動の見せ方によって授業への評価が変わったのは、その授業が自分の専攻に関わる学生たちで、専攻外の学生の評価は主に授業の成績と結び付いていました。この結果は、質問で目立った行動が本人にとってどのくらい判断材料になるかによって、影響が異なることを示しています。

これらの実験で変えたのは、過去の行動について尋ねる際の質問文です。実際に新しい宗教活動や授業での行動をさせて、本人の性格や好みが変化するかを調べたものではありません。

もともとの態度が曖昧な人ほど、質問で目立った行動の影響を受けた

ChaikenとBaldwin(1981)は、大学生が環境保護についてどのような態度を持っているかを調べました。最初に、環境保護をする人であることについての好き嫌いと、その理由や考えを尋ねました。そして約2週間後、先の研究と同じように質問の表現を使い分け、環境に配慮した過去の行動、または環境に反する過去の行動を「自分もしている」と答えやすくしました。

最初の回答で好き嫌いと考え方が一致しにくかった人たちでは、環境に配慮した行動が目立つ質問を受けた人の方が、環境に反する行動が目立つ質問を受けた人より、自分を環境保護に取り組む人だと評価し、環境保護にも好意的な態度を示しました。一方、最初の好き嫌いと考え方が比較的一致していた人たちでは、質問文の違いによる明確な差は見られませんでした。ChaikenとBaldwin(1981)

研究者たちは、前者を態度がまだ明確に定まっていないと考えられる人たち、後者を比較的よく定まっていると考えられる人たちと捉えました。この実験は、自分の態度がはっきりしない場合に、質問で目立った過去の行動が自己評価の手がかりになりやすいという説明を支えます。ただし、質問への回答に見られた違いであり、環境に配慮する実際の行動がその後増えたことを示すものではありません。

認知的不協和理論との違い

自分の行動の後で考えが変わる現象は、「認知的不協和理論」でも説明されることがあります。認知的不協和は、考えと行動などが食い違って不快な気持ちが生じ、その不快さを減らそうとするという説明です。一方、自己知覚理論では、行動とその場の事情から自分の態度を推測するため、そのような不快さを必ずしも前提にしません。

Fazio、Zanna、Cooper(1977)は、自分が受け入れられる範囲の主張をしたときの態度変化は自己知覚理論で、受け入れられない主張をしたときは認知的不協和理論で説明できるのではないかと提案し、実験で検討しました。Fazioら(1977)

ただし、RonisとGreenwald(1979)は、その区分が従来の二つの理論から必然的に導かれるわけではなく、実験結果も一つの説明に決めるには十分でないと批判しました(RonisとGreenwald(1979))。そのため、行動の後に態度が変わったという結果だけで、どちらの仕組みが働いたかを断定することはできません。

身近な場面で考える

たとえば、初めは特に好きだと感じていなかった地域の読み聞かせ会に、一度参加した人がいたとします。その人はその後も、時間ができると自分から申し込み、何度か本を読む役を引き受けました。ある日、自分の行動を振り返り、「人に本を読む時間が好きなのかもしれない」と思ったなら、自己知覚理論の考え方で理解できる例です。

一方、毎回参加していた理由が「ほかに人手がなく、断りにくかったから」だったとします。その場合、同じ回数だけ参加していても、参加したことを好きという気持ちの表れだと判断する根拠は弱くなります。自分から選んだのか、周囲の事情に押されていたのかという違いが重要です。

これは仕組みを理解するための仮の例です。自分の気持ちがまだよく分からないときは、過去に何を選び、そのときどんな理由や事情があったかを一緒に振り返ることが、自己理解の手がかりになるかもしれません。ただし、こうした振り返りが必ず本心を明らかにするという研究結果ではありません。他人の気持ちについても、見えている行動だけで決めつけることはできません。

自己知覚理論の中心は、自分の気持ちを知るときに、自分がしたことと、その行動を取った事情の両方が手がかりになる場合があるという点です。

参考文献・出典