変化盲とは?目の前の変化に気づかないのはなぜか

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

目の前の人の服装や、見ていた画面の一部が変わっていても、すぐには気づかないことがあります。はっきりした違いがあれば分かりそうなのに、なぜ見落としてしまうのでしょうか。

変化盲とは、見ている場面の一部が変わっても、その前後の違いに気づかないことがある現象です。特に、変化の途中に一瞬の空白や遮るものが入ると、大きな違いでも見落とされることがあります。変化を見つけるには、今見えているものに注意を向けるだけでなく、少し前の様子と比べる必要があるためです。

変化盲とは?目の前の違いを見落とす仕組み

たとえば、机の上にノート、マグカップ、ペンが並んだ写真を見たとします。少し空白の画面が入った後、同じ机の写真が再び表示されます。しかし、今度はマグカップの色が変わっています。二枚を並べて見れば違いが分かっても、短い間隔で一枚ずつ見ると、すぐには変化に気づかない場合があります。これは研究の考え方を示す仮の例です。

変化を見つけるには、前の写真でマグカップがどんな色だったかを覚え、後の写真の色と比べなければなりません。さらに、変化する瞬間がはっきり見えていれば、そこに注意が向く手がかりになりますが、一瞬の空白が入るとその手がかりを使いにくくなります。Rensinkら(1997)

こうした実験は、人が見た場面の細かな情報をいつもすべて保持しているわけではないことや、変化した場所に注意を向けることの重要性を示しています。ただし、変化に気づかなかったことだけで、変化前の情報がまったく記憶されていなかったと断定することはできません。どの段階で違いを見つけられなかったのかにも注意が必要です。SimonsとRensink(2005)

研究で分かっていること

写真の間に短い空白を入れると、変化を見つけにくくなった

Rensinkら(1997)は、元の写真と一部分を変えた写真を交互に繰り返し見せ、その間に短い空白の画面を挟んで、参加者が変化に気づくまでを調べました。写真の中で物の位置などが大きく変わっていても、繰り返し見せられた変化をなかなか見つけられない場合がありました。

一方、どの部分が変わるのかを言葉で知らせると、変化を見つけるまでの時間が短くなりました。また、その場面で重要と考えられる物の変化は、周辺にある重要度の低い物の変化より早く見つけられる傾向がありました。変化が見える大きさかどうかだけでなく、どこに注意を向けるかが結果に関わっていたのです。Rensinkら(1997)

変化した場所が隠れなくても、見落としが起こった

O’Reganら(1999)は、風景写真の上に小さな模様を一瞬だけ複数表示する方法を使いました。模様は変化する場所を直接覆っていませんでしたが、模様が現れるタイミングで写真の一部を変えると、大きな変化でも気づかれにくくなりました。

この結果は、変化した部分が物理的に隠れていたから気づかなかった、という説明だけでは足りないことを示しています。画面の別の場所にも同時に動きや乱れが生じると、どこが変化したのかを捉えにくくなる場合があります。O’Reganら(1999)

目の前で会話している人の入れ替わりにも気づかなかった

SimonsとLevin(1998)は、歩いている人に研究者が道を尋ねる場面で、会話の途中に相手を別の研究者と入れ替える実験を行いました。二人の間を通る大きなドアで視界が一時的に遮られ、その間に研究者が交代して会話を続けました。

この実験では、歩行者の約半数が話し相手の入れ替わりに気づきませんでした。写真を見ているだけでなく、実際に人と話している最中でも、大きな変化を見落とす場合があることが分かります。ただし、この結果は、どんな対面場面でも半数が人の交代に気づかないという意味ではありません。SimonsとLevin(1998)

変化盲と不注意盲はどう違うのか

変化盲と似た現象に「不注意盲」があります。変化盲は、たとえば前の写真にはあった物が次の写真では消えていても、前後の違いに気づかないことです。これに対して不注意盲は、一つの場面を見ているときに、予想外に現れた物の存在そのものに気づかないことを指します。

どちらも注意の向け方と関係しますが、変化盲では前後の状態を比べる必要がある点が重要です。Jensenら(2011)は、両者に共通点がある一方、異なる現象として研究されてきたことを整理しています。Jensenら(2011)

身近な場面で考える

たとえば、家族が家具の配置を相談するために、部屋の写真をスマートフォンで見比べているとします。一枚目を閉じてから二枚目を開くと、棚の位置が変わっていても、すぐには気づかないかもしれません。前の写真で棚がどこにあったかを思い出しながら比べる必要があるからです。これは研究で調べた仕組みを身近な場面に置き換えた仮の例です。

写真や画面の変更点を確かめたいときは、二枚を並べて見たり、調べたい場所を決めて順に比較したりする方法が考えられます。前後の違いを見つける手がかりを増やすという考え方に沿った提案ですが、どんな変更でも必ず発見できると研究が保証しているわけではありません。

変化盲が示しているのは、大きな違いが目の前にあっても、前後の情報を比べるための注意や手がかりが足りないと気づけない場合があるということです。変化に気づけなかったときは、見た目の違いの大きさだけでなく、途中に何が起こり、どこに注意を向けていたかも関係しているのです。

参考文献・出典

  • Rensink, R. A., O’Regan, J. K., & Clark, J. J. (1997). To see or not to see: The need for attention to perceive changes in scenes. Psychological Science, 8(5), 368–373. 写真を切り替える間に短い空白を挟み、変化の発見に注意や場所の手がかりがどう関係するかを調べた実験。
  • O’Regan, J. K., Rensink, R. A., & Clark, J. J. (1999). Change-blindness as a result of ‘mudsplashes’. Nature, 398, 34. 写真の変化部分を直接隠さなくても、同時に短い視覚的な乱れが起こると変化を見落とすことを報告した研究。
  • Simons, D. J., & Levin, D. T. (1998). Failure to detect changes to people during a real-world interaction. Psychonomic Bulletin & Review, 5(4), 644–649. 道案内の会話中に相手が交代する実験で、約半数の歩行者が入れ替わりに気づかなかった結果。
  • Simons, D. J., & Rensink, R. A. (2005). Change blindness: Past, present, and future. Trends in Cognitive Sciences, 9(1), 16–20. 変化盲から視覚や記憶についてどこまで結論付けられるかを検討した総説。
  • Jensen, M. S., Yao, R., Street, W. N., & Simons, D. J. (2011). Change blindness and inattentional blindness. Wiley Interdisciplinary Reviews: Cognitive Science, 2(5), 529–546. 前後の変化を見落とすことと、予想外の物の存在を見落とすことの違いを整理した総説。