不注意盲とは?注意を向けていないものを見落とす仕組み

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

目の前を人が通ったのに、別のことに集中していて気づかなかった。そんな見落としは、注意の向け方と関係している場合があります。

不注意盲とは、ある作業に注意を向けているとき、目の前に現れた予想外のものに気づかない現象です。視力だけの問題ではなく、何を見ようとしているかによって、気づけるものが変わることを示しています。

不注意盲とは?注意を向けたもの以外を見落とす仕組み

私たちは、視界に入るものすべてを同じように詳しく確かめているわけではありません。たとえば特定の人を探しているときは、その人の服装や顔に注意を向け、ほかの人や物にはあまり注意を払いません。

不注意盲で重要なのは、対象が見える場所にあっても、それがあると意識して気づくとは限らないことです。見落としは、予想していない対象が現れたときに起こりやすく、今している作業の難しさや、探しているものと対象の特徴が似ているかどうかによっても変わります(Simons & Chabris, 1999)。

よく似た現象に「変化盲」があります。変化盲は、同じ場面の前後で物や人が変わったのに、その違いに気づかないことを指します。一方、不注意盲は、注意を別のことに向けている間に現れた予想外の対象そのものを見落とす現象です。どちらも注意に関係しますが、気づかなかった対象が異なります。

ゴリラの実験で分かったこと

SimonsとChabrisが1999年に発表した研究では、参加者に、白い服と黒い服の2チームがバスケットボールをパスし合う映像を見せました。参加者には片方のチームのパス回数を数えるように頼み、映像の途中には、ゴリラの着ぐるみを着た人、または傘を持った人が約5秒間横切るようにしました。予想外の人物が現れることは、事前に知らせていません。

映像の作り方やパスの数え方を変えた複数の条件で、分析対象となった192人のうち46%は、途中に現れた予想外の人物に気づきませんでした。この46%は、ゴリラだけでなく傘を持った人が現れる条件も合わせた結果です(Simons & Chabris, 1999)。

さらに、パスを数える課題が難しい条件では、比較的簡単な条件よりも人物に気づく割合が低くなりました。黒いゴリラに気づいた割合も、白い服のチームを追っていた人では27%、黒い服のチームを追っていた人では58%と異なりました。黒いものへ注意を向けていると、黒いゴリラも気づきやすくなったと考えられます。

この結果から、予想外のものが目立っているかどうかだけでなく、そのとき何を追いかけ、どんな特徴に注意を向けているかが、見落としに関わることが分かります。

専門家でも見落とすことはあるのか

Drewらが2013年に行った別の実験では、画像から肺の小さな異常を探すことに慣れた放射線科医24人に、肺の断面画像を調べてもらいました。研究者は最後に見る画像の中へ、探す対象とは関係のないゴリラの図を紛れ込ませました。

その結果、24人中20人がゴリラを見たと報告しませんでした。目の動きを記録すると、見落とした20人のうち12人は、ゴリラが表示されているときにその場所を直接見ていました。実験後にその図を示すと、24人全員がゴリラに気づきました(Drew, Võ, & Wolfe, 2013)。

専門家であっても、自分が探すように求められたものとは異なる対象を見落とすことがあります。ただし、これは研究のために作った画像と指示の下での結果です。医療現場で同じ割合の見落としが起こることを示したものではありません。

また、これまでの研究をまとめた2024年の分析では、調べられた能力や性格の違いによって、予想外のものに気づく人を安定して見分けられるという証拠は乏しいと報告されました。ただし、調査の数が少ない項目もあり、個人差がまったくないと結論づけられたわけではありません(Simons, Hults, & Ding, 2024)。

身近な場面で考える

たとえば駅で、案内板から目的の出口番号を探しているとします。そのすぐそばを知人が手を振りながら通り過ぎても、出口番号を探すことに集中していて気づかないかもしれません。知人が目に入る位置にいたとしても、意識は案内板の数字へ向いているからです。

この例は実験で確認された駅での出来事ではなく、不注意盲を日常に置き換えて考えたものです。誰かが近くの人や物に気づかなかったときも、「見えていたはずだから無視した」とすぐに判断できるわけではありません。

周囲の状況を確かめる必要があるときには、探しているものだけを追い続けず、いったん注意をほかの場所へ向け直すことも一案です。不注意盲が教えてくれるのは、目の前にあるものすべてに、私たちが自動的に気づけるわけではないということです。

参考文献・出典

Simons, D. J., & Chabris, C. F. (1999). Gorillas in our midst: Sustained inattentional blindness for dynamic events. Perception, 28(9), 1059–1074. ゴリラなどの予想外の人物を見落とす実験と、課題の難しさ・注意を向けた対象による違いの根拠です。

Drew, T., Võ, M. L.-H., & Wolfe, J. M. (2013). The invisible gorilla strikes again: Sustained inattentional blindness in expert observers. Psychological Science, 24(9), 1848–1853. 放射線科医が肺の画像に含まれる予想外の図を見落とした実験の根拠です。

Simons, D. J., Hults, C. M., & Ding, Y. (2024). Individual differences in inattentional blindness. Psychonomic Bulletin & Review, 31, 1471–1502. 能力や性格と見落としとの関係について、複数の研究をまとめた分析の根拠です。