内集団バイアスとは?自分が属する集団をひいきする心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

同じ学校の人が考えた案と、別の学校の人が考えた案。内容が似ていても、自分と同じ学校の人の案の方が良く思えることがあります。こうした判断には、相手が「自分の仲間かどうか」が関わっているかもしれません。

内集団バイアスとは、自分が属していると感じる集団の人や、その集団に関わるものを、別の集団より好意的に評価したり、有利に扱ったりしやすくなる傾向です。親しい人同士でなくても、集団の分け方によって判断が偏る場合があります。

内集団バイアスとは?「自分たち」をひいきする心理

心理学では、自分が一員だと思っている集団を「内集団」と呼びます。学校のクラス、スポーツチーム、趣味の仲間などが身近な例です。内集団バイアスでは、同じ集団だというだけで、相手への評価や協力のしかたに違いが生じることがあります。

たとえば、同じ条件で作られた二つの提案を比べるとき、内容を詳しく確認する前から「自分のチームの提案の方が良さそうだ」と感じる場合です。こうしたひいきが実際に起きているかは、提案の内容が同じ程度でも、どちらの集団が出したかによって評価が変わるかを見て判断します。

集団への所属は、自分が何者かを考える手がかりにもなります。自分の仲間を良く捉えることは、自分が属する集団への肯定的な気持ちと結び付いている可能性があります。ただし、なぜひいきするかは一つの理由で説明できるとは限らず、協力し合う見込みや場面の違いも関わります(Brewer, 1999、Balliet et al., 2014)。

1971年の研究では、配分相手が誰か分からなくてもひいきが起きたのか

Tajfelらが1971年に発表した研究では、参加者を、以前からの仲間意識や対立とは関係のない、ささいな基準で集団に分けました。そのうえで、参加者にほかの人への報酬の割り振り方を選んでもらい、自分と同じ集団の人と、別の集団の人への配分を比べました。

第1実験の参加者は互いを知る同級生でしたが、報酬を配る際は、相手が誰か分からないよう番号と集団名で示されました。参加者が自分自身の取り分を増やすために判断する場面でもありません。それでも、自分と同じ集団に属する人に有利な割り振りが見られました(Tajfel et al., 1971)。

さらに別の条件では、自分の集団が受け取る報酬をできるだけ増やすことよりも、別の集団との差が大きくなる割り振りが選ばれる傾向も示されました。集団を分けるだけでも、その境目が「自分たち」と「相手側」を比べる基準になりうることを示した研究です。

ただし、この実験で調べたのは、用意された選択肢から報酬の配分を選ぶ行動です。日常の人間関係で同じ大きさの差が生じるかどうかは、この結果だけでは分かりません。

協力する場面や実験の条件によって、偏りは変わる

Ballietら(2014)は、人々が自分と同じ集団の相手と、別の集団の相手にどれくらい協力するかを調べた複数の研究をまとめました。全体として、同じ集団の相手に協力しやすい傾向がありました。特に、相手との協力が互いの結果に関わる場面では、単に相手へ物やお金を分けるような場面より、その傾向が強く見られました(Balliet et al., 2014)。

これは、同じ集団だからという感覚だけでなく、相手と助け合えるかどうかも、ひいきの強さに関わりうることを示しています。ただし、研究をまとめた結果であり、個々の人が必ず同じ行動を取ると予測できるものではありません。

また、Kerrら(2018)は、集団を分けただけでもひいきが起きるという実験結果を再検討しました。報酬を自分の集団に多く配分する傾向は、参加者が周囲から隔てられていない場合や、実験の説明を口頭ではなく文章で受け取った場合に、より強く見られました。実施した国によっても違いがありました(Kerr et al., 2018)。

したがって、集団を分ければ誰でも同じようにひいきするという単純な決まりではありません。どのような場面で、どんな判断を求められるかによって、偏りの表れ方は変わります。

仲間をひいきすることは、ほかの集団を嫌うことなのか

内集団バイアスは、別の集団への強い敵意がなくても起こりえます。たとえば、同じ集団の相手には積極的に協力する一方、別の集団の相手には特別に悪いことをしない場合でも、対応には差が生じます。

Brewer(1999)は、集団への好意と別の集団への敵意を区別し、仲間を優先することが、そのまま相手を嫌うことを意味するわけではないと論じています。協力についての研究をまとめたBallietら(2014)も、集団間の協力の差は、主として自分の集団への優遇と関わるという結果を報告しています(Brewer, 1999、Balliet et al., 2014)。

この違いは重要です。相手を嫌っていなくても、自分の仲間に機会や評価が偏れば、別の集団の人にとっては不公平な結果になりえます。

身近な場面で考える

たとえば、学校の文化祭で二つの班が展示の企画を提出したとします。実行委員の一人はA班のメンバーです。A班とB班の企画は、費用も準備にかかる時間もほぼ同じですが、その人はA班の案を「きっと成功する」と高く評価し、B班の案には厳しく質問するかもしれません。

この例は、内集団バイアスを理解するための仮の場面です。もし自分の班の案にだけ有利な判断をしているなら、内容ではなく所属する集団が評価に影響した可能性があります。一方、準備状況についてA班の方をよく知っているなど、判断に役立つ情報の違いがある場合は、その影響も考える必要があります。

このような場面では、企画を出した班の名前を見る前に、費用・安全性・準備時間などの比較項目を決めておくと、何を根拠に評価したかを確かめやすくなります。これは日常の判断を整理するための提案であり、どんな場面でも偏りを防げると確かめられた方法ではありません。

内集団バイアスを知ると、仲間を大切にする気持ちと、人や提案を公平に評価することが、必ずしも同じではないと気づきやすくなります。

参考文献・出典

Tajfel, H., Billig, M. G., Bundy, R. P., & Flament, C. (1971). Social categorization and intergroup behaviour. European Journal of Social Psychology, 1(2), 149–178. ささいな基準で分けた集団でも、自分の集団への報酬配分が有利になる傾向を調べた研究の根拠です。

Balliet, D., Wu, J., & De Dreu, C. K. W. (2014). Ingroup favoritism in cooperation: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 140(6), 1556–1581. 集団の内外で協力の程度を比較し、相互に協力する必要性などによる違いをまとめた研究の根拠です。

Kerr, N. L., Ao, X., Hogg, M. A., & Zhang, J. (2018). Addressing replicability concerns via adversarial collaboration: Discovering hidden moderators of the minimal intergroup discrimination effect. Journal of Experimental Social Psychology, 78, 66–76. 研究の実施方法や場所の違いによって、集団へのひいきの強さが変わることを調べた研究の根拠です。

Brewer, M. B. (1999). The psychology of prejudice: Ingroup love or outgroup hate?. Journal of Social Issues, 55(3), 429–444. 自分の集団への好意と、ほかの集団への敵意の関係を整理した総説の根拠です。