セルフ・ハンディキャッピングとは?失敗の理由を前もって用意してしまう心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

大切な発表の前に「ほとんど練習できなかったから、失敗しても仕方ない」と話す人がいます。本当に忙しかったのかもしれません。しかし、もし能力を低く見られるのが怖くて、わざと練習を減らしていたらどうでしょうか。

セルフ・ハンディキャッピングとは、結果が出る前に自分に不利な条件を作ったり、その条件があると伝えたりして、失敗を自分の能力以外の理由で説明できるようにすることです。自分の能力について悪い評価を受ける不安から、このような行動が起こる場合があります。

セルフ・ハンディキャッピングとは?失敗前に理由を用意する仕組み

ここでいう「ハンディキャップ」は、試験や発表などに取り組むときの不利な条件です。JonesとBerglas(1978)は、能力への自信が揺らぐと、失敗を能力のせいにしないで済む理由を前もって用意することがあると論じました(Jones & Berglas, 1978)。

たとえば試験前に、準備する時間があるのにあえて勉強を減らしたとします。結果が悪ければ「勉強しなかったからだ」と説明でき、良ければ「十分に勉強しなくてもできた」と考えられます。失敗した場合に能力を疑わずに済む余地を残すことが、この考え方の中心です。

行動で条件を作る場合と、事情を申告する場合

  • 実際の行動:練習や準備を控えるなど、結果が悪くなる可能性のある選択をする。
  • 事情の申告:試験前に強いストレスや緊張などを訴え、失敗した場合の理由にできる状況を伝える。

この二つは研究でも区別されています(Hirtら, 1991)。ただし、準備不足や緊張には本当の理由がある場合もあります。発言や行動を見ただけで、本人がわざと言い訳を用意したと判断することはできません。

関連する「自己奉仕バイアス」は、結果が出た後に成功や失敗の理由をどう考えるかに関わります。セルフ・ハンディキャッピングは、結果が出る前に行う選択や申告に注目する点が違います。

研究で分かっていること

成功の理由が不確かなとき、不利になる選択をした

BerglasとJones(1978)は、大学生を対象に二つの実験を行いました。最初に、解ける問題か、実際には解けない問題を出し、参加者にはどちらの場合も「成功した」と伝えました。次の課題の前に、成績を高めると説明された薬か、下げると説明された薬か、どちらを選ぶかを調べました。

第一実験には男子学生68人と女子学生43人が参加しました。解けない問題の後で成功したと伝えられた男子学生には、成績を下げると説明された薬を好む傾向が見られました。一方、女子学生では予測した傾向は見られませんでした。第二実験でも、男子学生について同じ方向の結果が報告されました(Berglas & Jones, 1978)。

これは薬の効果を確かめた結果ではなく、成績に不利だと説明された選択肢を選ぶかを主に調べた実験です。限られた条件での結果を、男性なら必ず同じ行動をするといった結論にはできません。

ストレスの申告と練習不足では、選び方が違った

Hirtら(1991)は、知的能力を測る試験を受けると思っている参加者に、練習やストレスが試験の成績に影響するかについて、異なる説明をしました。その後、申告するストレスの程度と、実際にどのくらい練習するかを調べました。

事前の質問でセルフ・ハンディキャッピングをしやすいとされた人では、男女ともストレスを申告する方法を使う傾向が見られました。一方、練習を控えるという行動は、セルフ・ハンディキャッピング傾向が強い男性に見られました。両方の方法が使えるときには、セルフ・ハンディキャッピング傾向が強い男女とも、練習を減らすよりストレスを申告する方法を選ぶ傾向がありました(Hirtら, 1991)。

この結果は、実際に不利な条件を作ることと、不利な事情を伝えることが同じではないと示しています。性別による結果の違いも、この実験の参加者や条件に限ったものです。

失敗の言い訳になっても、他人からの印象は悪くなることがある

LuginbuhlとPalmer(1991)は、試験前に勉強せず映画を見に行く人物と、そうしない人物の映像を見せ、試験の成績も変えて観察者の評価を調べました。

勉強しなかったことは、成績の悪さを能力だけのせいにしない理由になりました。しかし、その人物の性格などへの評価は否定的になりました(Luginbuhl & Palmer, 1991)。能力が低いと思われにくくなることと、人物全体への好感が高まることは別です。

失敗への恐れや自分への評価との関係

Schwingerら(2022)は、学習場面のセルフ・ハンディキャッピングについて、159件の研究に含まれる194の独立した参加者集団、計81,630人をまとめました。失敗への恐れが強いことや、自分への評価が低いことは、この行動を取りやすい傾向と関係していました(Schwingerら, 2022)。

ただし、調べたのは主に気持ちや個人の特徴と行動との関連です。失敗への恐れが必ずセルフ・ハンディキャッピングを引き起こすと証明したものではありません。また、質問の仕方などによって関係の強さは異なりました。

身近な場面で考える

たとえば、歌の発表会に出る人が「本気で練習して失敗したら、才能がないと思われそうだ」と感じ、練習時間があるのにあえて練習を控えたとします。本番でうまく歌えなければ「練習不足だったから」と思え、うまく歌えれば「練習していないのにできた」と感じられるかもしれません。

これは研究で観察された出来事ではなく、仕組みを考えるための仮の例です。実際に練習できない事情があった人を、この心理現象だけで説明することはできません。

自分に似た行動があると感じた場合は、「今の選択は結果を良くするためか、それとも失敗したときに能力を疑わずに済むようにするためか」と振り返ることが、行動の目的を考える手がかりになります。これは日常への提案であり、問いかけるだけで行動が変わると確かめられた方法ではありません。

参考文献・出典