IKEA効果とは?自分で作ったものの価値を高く感じる心理
自分で作った小物や組み立てた家具を見て、「同じものを買うより、これを大切にしたい」と感じたことはないでしょうか。仕上がりが特別に優れていなくても、自分が手を動かしたことが、その品物の価値の感じ方に関わる場合があります。
IKEA効果(イケア効果)とは、自分で作ったり組み立てたりした品物を、他人が用意した同じような品物より高く評価することがある心理現象です。ただし、手間をかければ何でも好きになるわけではなく、作業を完成できたか、何を評価するのかなどの条件が関わります。
IKEA効果とは?自分で作ると価値の感じ方が変わる
この名前は、購入者が自分で家具などを組み立てることで知られるIKEAにちなみ、心理学者のNortonらが名付けたものです。2012年の研究では、収納箱、折り紙、ブロック玩具を使って、自分で作った品物と他人が作った品物への評価を比較しました(Nortonら, 2012)。
たとえば同じ型の収納箱でも、自分で組み立てた人と、完成品を渡された人とでは、その箱に支払ってよいと考える金額が異なるかもしれません。これは品物の性能や出来栄えが実際に良くなったという意味ではなく、本人がその品物に感じる価値が変わるという話です。
また、「自分の持ち物だから手放したくない」と感じることと、「自分で作ったから価値を感じる」ことも区別する必要があります。Nortonらの実験では、完成品を渡された人に比べ、自分で組み立てた人の評価が高くなる結果がありました。単に品物を持っていることだけでは説明しきれない違いです。
なぜ自分で作ったものを高く評価するのか
一つの説明は、品物を完成させることで「自分にもできた」という達成感や、自分の力を確かめられる感覚が生まれるというものです。
Mochonら(2012)は、自分で組み立てた品物に価値を感じることと、完成を通じて自分に能力があると感じることの関係を調べました。作業によって得られる自信が、品物の評価を高めることに関わるという結果が報告されています(Mochonら, 2012)。
ただし、達成感だけが原因と決まったわけではありません。作ったものを自分の一部のように感じることや、持ち物としての愛着なども関係する可能性があります。後の子どもを対象にした研究では、単に手間が多いことや、所有していることだけでは結果を説明できませんでした(Marshら, 2018)。
研究で分かっていること
同じ収納箱でも、自分で組み立てた人の提示額が高かった
Nortonら(2012)の一つの実験では、米国の大学生52人が参加しました。一方のグループは収納箱を説明書に従って組み立て、もう一方はすでに組み立てられた同じ型の箱を見ました。その後、箱を買うためにいくらまで支払ってよいかを答えてもらいました。
平均の提示額は自分で組み立てた人が0.78ドル、完成品を見た人が0.48ドルでした。箱そのものの性能やデザインを変えなくても、自分で完成させた経験によって評価額が高くなる場合があることを示しています(Nortonら, 2012・公開草稿)。
別の折り紙の実験では、参加者が自分で折った作品に提示した平均額は0.23ドル、ほかの人がその作品に提示した平均額は0.05ドルでした。自作品の持ち主の評価と、外から見た人の評価が一致するとは限らないことも分かります。
作った後に分解したり、完成できなかったりすると違いが弱まった
同じ2012年の研究では、ブロック玩具を自分で組み立てた人、組み立ててから分解した人、完成品を渡された人を比較しました。完成させた人は、ほかの人が組み立てた作品より自作品に高い金額を提示しましたが、組み立てた後に分解した人では、その差は統計的に明確ではありませんでした。
さらに別の実験では39人が収納箱を組み立て、最後まで完成させる条件と、完成前に作業を止める条件に分かれました。平均提示額は完成した人が1.46ドル、途中で止めた人が0.59ドルでした(Nortonら, 2012・公開草稿)。
この研究で重要なのは、作業に時間や手間をかけたことだけでなく、完成できたかどうかが評価に関わったという点です。ただし、実験で扱った特定の品物や作業についての結果であり、未完成のものには誰も愛着を感じないという意味ではありません。
子どもでも見られるが、何を作るかによって結果は違う
Marshら(2018)は、子どもを対象とした三つの研究で、自分の作った物を高く評価する傾向が5歳ごろから見られることを報告しました。5~6歳の子どもでは、作業にかけた手間の量だけで効果の強さを説明できず、持っているという感覚だけでも説明できませんでした(Marshら, 2018)。
Marshら(2022)は、英国とインドの5~6歳の子ども128人に、玩具を自分で作ったり、二人で協力して作ったりしてもらいました。どちらの国でも、自分たちが作った玩具は、同じ形の別の玩具より高く評価されました。協力して作る条件でも、この傾向が見られました(Marshら, 2022)。
一方、Raghoebarら(2017)は4~6歳の子ども86人を対象に、野菜で飾りを作る場合と、食品ではない材料で飾りを作る場合を比べました。その後の野菜への好みと実際に食べた量には、全体として明確な差が見られませんでした(Raghoebarら, 2017)。この研究が測ったのは食品の好みや食べた量で、品物に支払う金額ではありません。手作りの効果を別の行動に当てはめるときは、何を測った結果なのかを区別する必要があります。
多くの研究をまとめても、全体として価値を高く感じる傾向があった
Pelledら(2026年刊、2025年オンライン公開)は、55組の研究データ、計5,454人について、自分で作ったり組み立てたりすることが品物の評価に与える影響をまとめました。全体として、自分が作ることは評価を高める方向に働き、研究で使われた異なる評価尺度をそろえて比べた差は、中程度の大きさでした(Pelledら, 2026)。
この分析は、効果が一つの実験に限られないことを示しています。ただし、平均して効果があることと、すべての作品や状況で必ず価値が上がることは別です。
身近な場面で考える
たとえば、学校の行事で使う飾りを作った人がいるとします。ほかの人が作った同じような飾りも並んでいますが、その人は自分が完成させた飾りを「こちらのほうが大切だ」と感じるかもしれません。手間をかけて完成させた経験が、本人にとっての価値に加わったと考えられます。
これは研究で観察された行事の実例ではなく、仕組みを理解するための仮の場面です。自分が作ったものに愛着があること自体は、不自然でも間違いでもありません。ただし、人に譲る値段を決めたり、ほかの人が同じ価値を感じると予想したりするときは、自分の思い入れと、品物を使う人にとっての価値を分けて考えると、判断材料を整理しやすくなります。
参考文献・出典
- Norton, M. I., Mochon, D., & Ariely, D. (2012). The IKEA effect: When labor leads to love. Journal of Consumer Psychology, 22(3), 453–460. 収納箱・折り紙・ブロック玩具の実験で、組み立てた人の評価と完成の条件を調べた研究(大学公開の草稿)。
- Mochon, D., Norton, M. I., & Ariely, D. (2012). Bolstering and restoring feelings of competence via the IKEA effect. International Journal of Research in Marketing, 29(4), 363–369. 作ることで得られる能力の感覚と製品の評価との関係を調べた研究。
- Marsh, L. E., Kanngiesser, P., & Hood, B. (2018). When and how does labour lead to love? The ontogeny and mechanisms of the IKEA effect. Cognition, 170, 245–253. 子どもにおける効果の発達と、手間・所有の感覚について調べた研究。
- Marsh, L. E., Gil, J., & Kanngiesser, P. (2022). The influence of collaboration and culture on the IKEA effect: Does cocreation alter perceptions of value in British and Indian children? Developmental Psychology, 58(4), 662–670. 英国とインドの子どもが単独または共同で玩具を作った研究。
- Raghoebar, S., van Kleef, E., & de Vet, E. (2017). Self-crafting vegetable snacks: testing the IKEA-effect in children. British Food Journal, 119(6), 1301–1312. 子どもが野菜で飾りを作った場合の食品の好みと食べた量を調べた研究。
- Pelled, A., Demetriades, S. Z., & Walter, N. (2026). Labor Leads to Love, Right? A Meta-Analysis of the IKEA Effect. Psychology & Marketing, 43(2), 388–400. 自作・組み立てと品物の評価の関係をまとめた分析。2025年オンライン公開。