バイアスの盲点とは?他人の偏りには気づき、自分の偏りを見落とす心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

友人が好きな俳優の映画を高く評価したとき、「ファンだから点数が甘くなっているのかも」と思うことがあります。一方、自分が好きな俳優の映画を高く評価したときは、「内容をよく見たうえで判断している」と感じるかもしれません。

このように、他人の判断は偏っていると考えやすい一方、自分の判断には同じような偏りが働いていないと思いやすい傾向を、バイアスの盲点といいます。自分では公平に考えたつもりでも、判断に影響したものをすべて自覚できるとは限らないのです。

バイアスの盲点とは?自分と他人で偏りの見方が変わる心理

ここでいう「バイアス」は、先入観や自分に都合のよい情報などによって、判断が特定の方向へ寄りやすくなることです。「盲点」は、そのような影響が自分の考えにも及ぶ可能性に気づきにくいことを表します。

たとえば、同じ商品を選んだ二人がいたとします。友人については「広告の人気に影響されたのだろう」と考え、自分については「性能と値段を見比べて決めた」と説明するかもしれません。友人が本当に広告に影響されたのか、自分は影響されなかったのかは、その説明だけでは分かりません。

バイアスの盲点で中心となるのは、自分はほかの人ほど偏りに左右されないと評価しやすいという、自分と他人についての見積もりの違いです。人の心を読むだけで実際の偏りの大きさを確かめられるわけではないため、「自分より他人が偏っている」という判断そのものを事実として扱わないことが大切です(Proninら, 2002)。

なぜ自分の偏りには気づきにくいのか

自分の判断を振り返るときは、「公平に考えたつもりだった」「特定の人をひいきする気はなかった」といった心の中の考えや意図を手がかりにしやすくなります。一方、他人を評価するときには、相手の発言や行動など外から見える情報に目を向けます。

ProninとKugler(2007)の実験では、参加者は自分の偏りを判断するとき、他人の偏りを判断するときよりも、内心の考えを重視していました。また、評価する側に相手の考えを知らせても、自分と他人の偏りの見積もりの違いは残りました(Pronin & Kugler, 2007)。

偏りは本人が意識しないうちに判断に関わることがあります。そのため、「自分では偏らせるつもりがなかった」という気持ちだけでは、実際に公平な判断ができた証拠にはなりません。自分の見方がそのまま現実を表していると感じやすいことも、他人の異なる判断を偏りのせいだと思う理由の一つと考えられています(Pronin & Hazel, 2023)。

ただし、自分の内心を重視することだけで、バイアスの盲点が生じる理由を説明できるとは限りません。Mandelら(2022)は二つの実験(計1,057人)でバイアスの盲点を確認しましたが、2007年に報告された「自分の判断には内心を、他人の判断には行動を重視する」という違いは、同じ形では再現されませんでした。また、一般の人に偏りがあると説明してから「平均的な人」について尋ねる質問の形式も、回答に影響する可能性があると論じています(Mandelら, 2022)。

研究で分かっていること

自分より同級生のほうが偏っていると見積もった

Pronin、Lin、Ross(2002)は、複数の調査や実験で、自分と他人がどのくらい偏りに影響されると思うかを比較しました。そのうち一つの調査では、大学生30人に8種類の判断の偏りを説明し、自分と、同じ授業を受ける平均的な学生がそれぞれどのくらい影響を受けると思うか尋ねました。

9段階で付けた評価を8項目についてまとめると、平均は自分について5.05、同級生について5.85でした。数値が高いほど偏りに影響されるという評価で、参加者は自分より同級生のほうが影響されやすいと見積もっていました。ただし、8種類の偏りを個別に比べたとき、明確な差が見られたのは4種類でした(Proninら, 2002)。

これは、学生が自分と他人の偏りをどう評価したかを調べた結果です。全員が実際に他人より偏っていたと証明したものではありません。

自分より相手の評価に偏りを見いだした

同じ2002年の別の実験には、初対面の大学生20組、計40人が参加しました。参加者は写真と人物の説明を組み合わせる課題に取り組み、組ごとに一人は良い成績、もう一人は悪い成績を伝えられました。成績は実際の出来とは関係なく研究者が割り当てたものでした。参加者は試験が能力を正しく測るかを評価した後、自分と相手の評価が伝えられた成績にどのくらい影響されたと思うかを答えました。

20組のうち15組では、良い成績を伝えられた人が、悪い成績を伝えられた相手より、試験を信頼できると評価していました。この15組の参加者について、自分と相手の評価を比べると、相手のほうが成績に影響されたと思う傾向が見られました(Proninら, 2002)。

この結果は、少なくとも自分と相手が伝えられた成績に応じて試験を評価していた組では、他人の判断のほうに偏りを見いだしやすいことを示しています。ただし、「成績が評価に影響したか」と具体的に尋ねた質問では違いが見られた一方、偏りを指す言葉だけで尋ねた質問では明確な違いは確認されませんでした。

考える力が高ければ、この盲点を避けられるのか

West、Meserve、Stanovich(2012)は、二つの研究で、さまざまな判断の偏りについて自分と他人の影響の受けやすさを比べました。その結果、知的な課題の成績や慎重に考えようとする傾向が高い人でも、この自他の見積もりの違いが小さくなるとは確認されませんでした(Westら, 2012)。

また、Scopellitiら(2015)は、バイアスの盲点の個人差を調べる質問項目を作り、その得点と判断の仕方との関係を調べました。自分は他人より偏りが少ないと見積もる程度が強い人ほど、他人からの助言を取り入れにくい傾向などが見られました(Scopellitiら, 2015)。

ただし、後者は偏りの見積もりと助言の受け止め方との関係を示す結果であり、盲点が大きいことだけで助言を拒むようになると証明したものではありません。

身近な場面で考える

たとえば、友人と食事の店を相談しているとします。友人が人気店を勧めると「口コミに流されているのでは」と思う一方、自分が以前から好きな店を勧めるときは「味や値段を比較したから」と感じるかもしれません。

この場面は研究で観察された実話ではなく、仕組みを理解するための仮の例です。友人の選択が本当に偏っているか、自分の選択は偏っていないかは、それぞれの判断材料を確かめる必要があります。

自分の判断を見直すときは、「公平なつもりだったか」だけでなく、実際に何を比較し、都合の悪い情報も確かめたかを振り返ると考えを整理しやすくなります。他人の意見を聞くときにも、同じ確かめ方を使うことが一つの方法です。これは研究を踏まえた日常への提案であり、この手順だけで偏りがなくなると確かめられたものではありません。

参考文献・出典