統制の錯覚とは?自分では動かせない結果を左右できると感じる心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

抽選会で「自分で選んだくじのほうが当たりそう」と感じたり、偶然当たりが続くと「自分には選ぶコツがあるのかも」と考えたりすることがあります。ところが、どのくじも当たる確率が同じなら、選んだ人の腕前は当選を左右しません。

統制の錯覚とは、実際には自分の行動で変えられない結果について、自分の選択や工夫が影響すると実際以上に感じる心理現象です。ただし、人はいつも運任せの結果を操れると思うわけではなく、その感覚が起きる条件について研究結果には違いもあります。

統制の錯覚とは?偶然の結果に自分の力を感じる心理

「統制」とは、自分の行動によって物事の結果を変えられることです。たとえば、楽器を練習して演奏が上達するなら、自分の行動が結果に影響しています。一方、どの券も同じ確率で当たる抽選では、自分で一枚を選んでも、当たりやすさは変わりません。

心理学者のランガーは1975年、実際の成功確率に比べて自分が成功できる可能性を高く感じることを「統制の錯覚」として研究しました。自分で選ぶ、慣れている、競う、練習するといった、ふだんは能力が結果を左右する場面の特徴が、運で決まる場面にも入り込むとどうなるかを調べたのです(Langer, 1975)。

大切なのは、自分で選ぶことができるのと、その選択で結果の確率を変えられるのとは別だという点です。現実に行動が結果を変えるなら「自分にできることがある」と考えるのは必ずしも錯覚ではありません。

なぜ、自分が結果に関わっていると感じるのか

自分が行動した直後に望む結果が起きると、「自分の行動のおかげだ」と考えることがあります。Thompsonら(1998)は研究を整理し、成功がどれほど目立つか、結果をどれほど望んでいるか、慣れているかといった条件が、結果を左右できるという判断に関わると述べています。

自分には結果を起こそうという意図があったか、行動と結果が結び付いて見えるかを手がかりに、影響力を見積もるという説明も提案しました(Thompsonら, 1998)。これは仕組みを考えるための説明の一つであり、すべての人や場面で同じ理由が働くと確かめられたわけではありません。

研究で分かっていること

自分で選んだくじを高い値段で評価した

Langer(1975)の一つの実験では、米国の職場で53人が1枚1ドルのくじを買いました。一方は券を自分で選び、もう一方には券が渡されました。どちらも当選は抽選によって決まります。

後日、別の人にくじを譲るならいくらで売りたいかを尋ねると、平均希望額は自分で選んだ人が8.67ドル、渡された人が1.96ドルでした(Langer, 1975)。

自分で選ぶことが、くじの評価に関係していた結果です。ただし、測ったのは売却希望額であり、本人が「自分の当選確率は何%か」と答えた結果ではありません。高い値段を付けた理由を、当選確率への思い込みだけだとは断定できません。

偶然当たった順番が、予想する力への自信を変えた

LangerとRoth(1975)は、男子大学生90人に硬貨の表裏を予想する課題を行ってもらいました。参加者が正解する順番はあらかじめ設定され、最初に当たりが多い人、後から当たりが多くなる人、ばらばらに当たる人などを比べました。

最初に多く当たった人は、ほかの条件の人より自分の予想能力を高く評価し、今後も当たりを増やせると期待しました(Langer & Roth, 1975)。硬貨の結果を操作できない場面でも、序盤の成功が自信に関わったのです。

Ebenら(2023)は、これに近い手順をオンラインで再検証しました。289人を三つの異なる当たり外れの並びに分けたところ、序盤の当たりが多い人は、ほかの並びの人より予想能力を高く見積もりました。ただし、確認された効果の大きさは原研究より小さめでした(Ebenら, 2023)。

良い結果が頻繁に起きると、操作できる感覚も強まった

Rudski(2000)は、参加者にコンピューター上の課題を行ってもらいました。どの反応を選んでも結果は変わらないようにし、得点が入る割合を約33%または66%に設定して、自分がどの程度得点を左右できたと思うかを尋ねました。

得点が入る回数の多い条件では、操作できるという評価が高くなる傾向が見られました(Rudski, 2000)。実際には行動と結果が結び付いていなくても、良い結果を多く経験すると自分の影響力を大きく見積もる場合があると考えられます。

「自分で選ぶだけ」の影響は、大規模な再検証では弱かった

Klusowskiら(2021)は、オンラインと実験室で計17件の実験を行い、合計10,825人について、自分で選ぶことが望ましい結果への期待を高めるかを調べました。たとえば、どの券も当選確率が同じくじを、自分で選ぶ場合と選ばずに受け取る場合を比較しました。

その結果、自分で選ぶだけでは、望ましい結果が起きるという期待はほとんど高まりませんでした。選ぶことによる違いが見られた場合も、一部の参加者がもともと券ごとの当選確率は同じではないと思っていたことなどが関わっていました(Klusowskiら, 2021)。

つまり、1975年のくじ実験で売却希望額に差があったことと、自分で選べば必ず当選への自信が増すことは同じではありません。何を測った研究なのかを区別することが重要です。

身近な場面で考える

たとえば地域のイベントで、当たりが混ざった箱からくじを一枚引くとします。係の人はどの券も同じ確率で当たるように準備しています。自分で好きな券を選んでも、係の人から券を渡されても、当たりやすさは変わりません。

ところが、以前に自分で選んだ券が何度か当たっていると、「自分で選ぶと当たりやすい」と感じるかもしれません。これは仕組みを理解するための仮の例で、実際にその人がそう感じると確認された出来事ではありません。

このような場面では、自分で決められることとその決定が実際に変えられる結果を分けて考えると、判断の根拠を整理しやすくなります。結果を変えられる場合も、変えられない場合もあるため、偶然なのか、自分の行動が結果に結び付く仕組みなのかを確かめることが大切です。

参考文献・出典