生成効果とは?自分で答えを考えることと記憶の関係
覚えたい言葉をそのまま読むのと、手がかりを見て自分で答えを考えるのとでは、どちらが記憶に残りやすいのでしょうか。心理学の研究では、自分で答えを作ることが、後の記憶を助ける場合があると分かっています。
生成効果とは、覚える情報を自分で作り出したとき、その情報を提示されて読む場合より、後で思い出したり見分けたりしやすくなる現象です。特に言葉を使った実験で繰り返し調べられてきました。ただし、どんな内容でも、考えれば必ず覚えやすくなるという意味ではありません。
生成効果とは?自分で答えを作る場合と読む場合の違い
たとえば、反対の意味を持つ言葉を覚える場面を考えます。「高い―低い」と二つの言葉をそのまま読む人と、「高い―( )」という手がかりから「低い」を自分で考えて答える人がいるとします。後で「低い」という言葉を覚えているか確かめると、答えを自分で作った場合の方が成績がよくなることがあります。これは仕組みを示すための仮の例です。
この比較で大切なのは、覚える対象が同じでも、学ぶときにその答えを自分で作ったか、そのまま読んだかという違いです。生成効果の研究では、言葉の一部を補ったり、示された言葉と反対の意味を持つ語を考えたりする課題が用いられてきました。SlameckaとGraf(1978)
自分で作った答えが覚えやすくなる理由として、手がかりと答えの関係を考えたり、答えに注意を向けたりすることが関わると考えられています。ただし、どの働きがどれほど重要なのかについては複数の説明があり、仕組みは一つに定まっていません。McCurdyら(2020)
よく似た「テスト効果」は、一度学んだ内容を後から思い出す練習に注目した現象です。一方、生成効果は、学ぶときに答えを提示されるか、手がかりから自分で作るかという違いに注目します。実際の勉強では二つが重なることもありますが、研究で比較している点は異なります。
研究で分かっていること
自分で作った言葉の方が覚えられた
SlameckaとGraf(1978)は、大学生96人が参加した5つの実験で、手がかりから言葉を自分で作る場合と、同じ言葉を提示されて読む場合を比較しました。学習の後には、覚えた言葉を思い出せるか、以前に見た言葉だと見分けられるかなどを調べました。
報告された5つの実験では、いずれも自分で言葉を作った条件の方が、ただ読んだ条件よりよい成績を示しました。覚えるときの手がかりや、後で記憶を調べる方法を変えても、生成した言葉の優位性が確認された研究です。SlameckaとGraf(1978)
多くの研究をまとめても、生成する利点が見られた
Bertschら(2007)は、それまでの86件の研究から得られた445の比較結果をまとめて分析しました。全体では、提示された内容を読むより、自分で情報を作る方が記憶の成績によい影響を与える傾向が見られました。一方、その効果の大きさは、実験で用いた課題や条件によって変わっていました。Bertschら(2007)
McCurdyら(2020)は、さらに広い範囲の126本の論文に含まれる310件の実験を分析しました。答えを作る際、どの程度選択肢が絞られているかも効果の大きさに関わっていました。たとえば、答えがほぼ決まる手がかりから言葉を作る場合と、自由に答えを考える場合では、同じ結果になるとは限りません。また、生成効果の仕組みを説明する複数の考え方を比較しても、すべてを一つの説明でまとめられるわけではありませんでした。McCurdyら(2020)
言葉そのものの記憶と、言葉の順番の記憶は違う
Mulligan(2002)は、言葉や、なじみの薄い言葉の組み合わせなどを使った3つの実験で、自分で答えを作る場合と読む場合を比較しました。なじみのある言葉では、生成した方が後でその言葉を見分けやすくなりました。しかし、学習時に並んでいた言葉の順番を再現するテストでは、生成した条件の方が成績が低くなりました。なじみの薄い材料では、言葉を見分ける成績に生成の利点が見られない場合もありました。Mulligan(2002)
この結果からは、言葉そのものを覚えやすくすることと、その言葉が並んだ順番まで覚えやすくすることは別だと分かります。生成効果を考える際には、後で何を思い出したいのかが重要です。
身近な場面で考える
たとえば、国語の勉強で反対の意味を持つ言葉を覚えるとします。「開始―終了」「増加―減少」という組み合わせを最初からすべて読む代わりに、「開始―( )」「増加―( )」と書いて、空欄の答えを考えてみます。その後で正しい言葉を確かめます。これは、手がかりから学ぶ内容を自分で作るという考え方を取り入れた方法です。
答えをまったく知らないときには、まず正しい意味や言葉を確認し、答えが考えられるようになってから空欄を作る方法も考えられます。何も手がかりがない難しい問題を長く考え続ければ、それだけ記憶がよくなると研究で確かめられているわけではありません。
また、歴史の出来事や料理の手順のように順番が重要な内容では、言葉の穴埋めだけでなく、順番を並べ直して確かめる練習も必要になるでしょう。言葉そのものと順番では結果が違った研究を踏まえた、日常での学び方の提案です。
生成効果が示しているのは、同じ情報を学ぶ場合でも、答えを受け取るか、自分で作るかによって記憶の残り方が変わり得るということです。手がかりから答えを考える機会を設けることで、ただ読むだけの学習とは違う形で情報に向き合えます。
参考文献・出典
- Slamecka, N. J., & Graf, P. (1978). The generation effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 4(6), 592–604. 大学生96人が参加した5つの実験で、言葉を自分で生成する場合と読む場合の記憶を比べた研究。
- Bertsch, S., Pesta, B. J., Wiscott, R., & McDaniel, M. A. (2007). The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition, 35(2), 201–210. 86件の研究をまとめ、生成効果の全体的な傾向と条件による違いを分析した研究整理。
- McCurdy, M. P., Viechtbauer, W., Sklenar, A. M., Frankenstein, A. N., & Leshikar, E. D. (2020). Theories of the generation effect and the impact of generation constraint: A meta-analytic review. Psychonomic Bulletin & Review, 27(6), 1139–1165. 310件の実験を分析し、答えの作り方を制限する条件や説明の仕組みを検討した研究整理。
- Mulligan, N. W. (2002). The generation effect: Dissociating enhanced item memory and disrupted order memory. Memory & Cognition, 30(6), 850–861. 言葉そのものの記憶と、並び順の記憶に対する生成の異なる影響を調べた実験。