テスト効果とは?思い出す練習が記憶に与える影響
教科書を繰り返し読むのと、教科書を閉じて覚えた内容を答えるのとでは、後の記憶に違いが出るのでしょうか。学習では、内容をもう一度見るだけでなく、自分の頭から思い出そうとすることも役立ちます。
テスト効果とは、一度学んだ内容を思い出す練習をすることで、その後も覚えていられる可能性が高まる現象です。ここでいう「テスト」は、成績を付ける本番の試験だけを指しません。自分で問いを作り、資料を見ずに答えてみることも含まれます。
テスト効果とは?読み直す学習との違い
たとえば、地理の本で県庁所在地を学んだとします。本を見ながら答えをもう一度確かめるのは「読み直す」学習です。一方、県名だけを見て所在地を答え、それから正解を確かめるのは「思い出す」練習です。二つの方法は、すでに読んだ内容を再び見るか、答えを自分の記憶から探すかという点で異なります。
思い出す練習は、自分が何を覚えているかを確かめるだけではありません。答えを頭の中から探す行為そのものが、後の記憶に影響すると考えられています。ただし、なぜその効果が生じるのかについては複数の説明が提案されており、仕組みが一つに決まったわけではありません。Dunloskyら(2013)
研究で分かっていること
読み直す方が有利なときと、思い出す方が有利なときがある
RoedigerとKarpicke(2006)は、学生に説明文を学んでもらい、文章を繰り返し読む場合と、読み直す代わりに覚えた内容を思い出して答える場合を比べました。練習のテストでは正解を教えず、最終テストを5分後、2日後、または1週間後に実施しました。
5分後の最終テストでは、繰り返し読んだ方がよく思い出せました。しかし、2日後と1週間後のテストでは、事前に思い出す練習をした方がよく覚えていました。つまり、学んだ直後の成績だけでは、時間がたった後の覚えやすさを判断できないことが分かります。RoedigerとKarpicke(2006)
一度正しく答えられた後にも、思い出す練習が役立った
KarpickeとRoediger(2008)は、学生に外国語の単語と英語訳の組み合わせを学んでもらいました。そして、一度正しく答えられた組み合わせについて、その後も見直しを続ける場合や、見直しをやめて答えを思い出すテストを続ける場合などを比べました。
1週間後のテストでは、一度正答した後の追加の見直しには、後の記憶を高める効果が見られませんでした。一方、思い出すテストを繰り返した条件では、後の成績が大きく高まりました。この結果は、一度答えられた段階で思い出す練習を終えることが、必ずしもよいとは限らないことを示しています。KarpickeとRoediger(2008)
教室での学習をまとめた研究でも効果が見られた
Yangら(2021)は、教室での小テストなどを調べた222件の独立した研究をまとめ、合わせて4万8,478人の学生のデータを分析しました。その結果、全体として、小テストなどを行う学習は、比較対象となった学習方法よりも、その後の学業成績を高める傾向がありました。
ただし、効果の大きさは、何と比較するか、どんな問題を出すか、正しい答えを伝えるか、何回テストするかなどによって異なりました。どのような小テストでも、誰に対しても同じ効果が出るという意味ではありません。Yangら(2021)
身近な場面で考える
たとえば、資格試験に向けて用語の意味を覚えたい人がいるとします。テキストを一度読んだ後、説明の部分を隠して用語だけを見ながら、自分の言葉で意味を書き出してみます。その後、テキストを開いて答え合わせをし、抜けていた内容や間違った部分を確認します。これは、読んだ内容を自分の記憶から取り出す練習を、日常の学習に取り入れる例です。
思い出そうとしても答えが出ないときには、内容を確認してからもう一度試すとよいでしょう。Dunloskyら(2013)がまとめた研究では、答え合わせを伴う練習テストの利点は特に安定しており、練習中の正答が少ない場合には、テストだけでは読み直しよりよい結果が得られない研究もありました。間違った答えをそのまま覚えないためにも、正解の確認には意味があります。Dunloskyら(2013)
思い出す練習を後日もう一度行うことも考えられます。テスト効果は「学ぶときに思い出すか」に、間隔効果は「学ぶ機会の間を空けるか」に注目するもので、二つを組み合わせることもできます。Dunloskyら(2013)
テスト効果から理解できるのは、思い出せるかどうかを確かめる行為が、次に思い出すための学習にもなり得るということです。読む時間の一部を、自分の記憶から答えを出す時間に変えることが、後の記憶を支える場合があります。
参考文献・出典
- Roediger, H. L., III, & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255. 説明文を読み直した場合と思い出すテストを受けた場合を比べ、最終テストまでの時間によって結果が異なることを報告した研究。
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L., III. (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966–968. 外国語の単語を一度正答した後の見直しと思い出す練習を比べ、後の記憶への影響を調べた研究。
- Yang, C., Luo, L., Vadillo, M. A., Yu, R., & Shanks, D. R. (2021). Testing (quizzing) boosts classroom learning: A systematic and meta-analytic review. Psychological Bulletin, 147(4), 399–435. 教室でのテストと学業成績の関係を222件の研究から調べ、効果が変わる条件も検討した研究整理。
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: Promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. 思い出す練習の有用性、答え合わせの役割、間隔を空けた学習との違いをまとめた総説。