ライキングギャップとは?会話相手からの好意を控えめに見積もる心理
初対面の人と話したあと、「自分ばかり話してしまった」「退屈させたかもしれない」と心配になることがあります。ところが、相手は思った以上に会話を楽しんでいたかもしれません。
ライキングギャップとは、会話のあと、自分が相手からどれくらい好かれたかを、相手が実際に抱いた好意より控えめに見積もりやすい傾向です。初対面の人同士などを調べた研究で、こうしたずれが平均的に確認されています。ただし、すべての会話で起こるわけではありません。
ライキングギャップとは?何と何の「ずれ」なのか
ここでいう「好意」は恋愛感情に限りません。「感じのよい人だ」「また話してみたい」といった、会話相手への親しみや関心も含みます。
この現象を考えるときには、二つの比べ方があります。
- 相手の実際の好意とのずれ:「相手は自分をどれくらい好いているだろう」という自分の予想を、相手本人が答えた自分への好意と比べます。
- 自分の中で感じるずれ:自分が相手を好ましく思う程度と、「相手は自分を好いてくれただろう」と予想した程度を比べます。
どちらもライキングギャップの研究で使われる比べ方ですが、一人ひとりについては同じ結果になるとは限りません。自分は相手の方を強く好いていると感じても、相手の実際の好意を正確に予想できている場合もあります。2025年の研究では、この二つを分けて検討する必要が示されました(Tissera et al., 2025)。
なぜ相手の好意を控えめに見積もるのか
会話中は、相手の表情や言葉を受け止めると同時に、自分の次の返事も考えています。そのため、会話が終わると、相手の楽しそうな反応よりも「うまく返せなかった」という自分の反省に意識が向くことがあります。
ブースビーらは2018年、初対面の人同士の会話を撮影し、別の人にも映像を見てもらいました。映像を見た人は会話中に示された好意を手がかりに、当事者が相手をどのくらい好いているかをある程度推測できました。しかし、会話の当事者自身は、その手がかりを自分が好かれているかの判断に十分使えていませんでした。
別の実験では、相手について自分が抱いた印象よりも、「相手が自分をどう見たと思うか」について浮かべた内容の方が否定的でした。そうした考え方の違いは、好意を控えめに見積もる傾向と関係していました(Boothby et al., 2018)。
ただし、これらの結果は、自分への厳しい見方がライキングギャップを生む唯一の原因だと証明したものではありません。
研究で分かっていること
初対面の会話では、好意の見積もりが低くなった
2018年の最初の実験では、研究室で初対面の二人に約5分間会話してもらい、それぞれが相手をどのくらい好いたか、相手からどのくらい好かれたと思ったかを尋ねました。全体の平均では、実際に相手へ抱いた好意の点数より、相手からの好意を予想した点数の方が低くなりました。
研究チームはさらに、会話の長さが異なる場合や、初対面の大人が集まる交流の場でも同様の傾向を確かめました。また、大学の寮で知り合った学生たちを追跡すると、最初の数か月はずれが見られましたが、年度末の調査では明確な差が見られなくなりました(Boothby et al., 2018)。
大人数の研究でも見られるが、個人差がある
スプレッチャーは、初対面の二人が会話した12件の研究から、米国の大学生1,835人の回答をまとめました。7段階で尋ねた結果、自分が相手を好いた程度は平均5.26点、相手から好かれたと予想した程度は平均4.71点でした。相手本人が実際に回答した好意と予想を比べても、全体では控えめな見積もりが見られました。
一方、個人別に見ると、相手の好意を低く見積もった人だけでなく、高く見積もった人や、予想がほぼ一致した人もいました。研究者は、大学生中心の結果をほかの年齢や文化にそのまま当てはめることには注意が必要だと述べています(Sprecher, 2026)。
子どもにも見られ、ずれの意味は一つではない
ウォルフらは2021年、米国の4〜11歳の子ども241人を調べました。相手との短い交流について尋ねると、5歳頃からライキングギャップに当たる傾向が現れ、年齢が高くなるほど強まっていました。研究者は、他人にどう評価されるかを気にするようになることとの関連を考えています(Wolf et al., 2021)。
また、2025年に2,753人分の初対面の印象を分析した研究では、「自分の方が相手を好きだ」と感じるずれは、自分への評価の低さや人づきあいへの不安と関連しました。しかし、相手が実際に答えた好意と本人の予想との差では、同じ関連は確認されませんでした。どちらのずれも、会話そのものの良し悪しとは一貫した関連が見られませんでした(Tissera et al., 2025)。
身近な場面で考える
たとえば、初めて参加した読書会で、隣の人と好きな本について話したとします。話し終えたあなたは、途中で言葉に詰まったことが気になり、「相手は退屈だったかも」と考えます。一方、相手はあなたから知らなかった本を教えてもらい、楽しい会話だったと感じているかもしれません。
これは仕組みを説明するための仮の例です。自分が感じた気まずさと、相手が実際に抱いた印象は同じとは限りません。ただし、ライキングギャップがあるからといって、目の前の相手が必ず自分に好意を持っていると決められるわけでもありません。
会話を振り返るときは、自分の失敗だと思う部分だけで結論を出さず、相手が質問をしてくれたことや楽しそうに話していたことなど、実際に見聞きした反応も思い出すと、印象を考える材料が増えます。
まとめ
ライキングギャップは、会話相手からの好意を実際より低く予想しやすい傾向です。初対面の会話を中心に繰り返し確認されていますが、個人差があり、親しくなる過程で小さくなる場合もあります。会話後の自己評価だけでは、相手がどう感じていたかは分からないという点が、この研究から学べることです。
参考文献・出典
- Boothby, E. J., Cooney, G., Sandstrom, G. M., & Clark, M. S. (2018). The Liking Gap in Conversations: Do People Like Us More Than We Think? Psychological Science, 29(11), 1742–1756. — 初対面の会話、好意の手がかり、寮での追跡調査。
- Wolf, W., Nafe, A., & Tomasello, M. (2021). The Development of the Liking Gap: Children Older Than 5 Years Think That Partners Evaluate Them Less Positively Than They Evaluate Their Partners. Psychological Science, 32(5), 789–798. — 子どもの年齢と好意の見積もりの関係。
- Tissera, H., Elsaadawy, N., Cooney, G., Human, L. J., & Carlson, E. N. (2025). Evaluating the Psychological and Social Nature of Actual and Perceived Liking Gaps. Journal of Personality and Social Psychology, 128(4), 967–982. — 二種類のずれと、その人の特徴や会話の評価との関係。
- Sprecher, S. (2026). Liking Gap(s) in Getting-Acquainted Interactions. The Journal of Social Psychology, 166(5), 650–655(2025年オンライン公開). — 12研究の集約と、個人差についての検討。