ストループ効果とは?文字の意味が色の判断を妨げる仕組み
「赤」と書かれた文字が青いインクで印刷されていたら、その文字の色を何と答えるでしょうか。正解は「青」ですが、文字に書かれた「赤」という言葉が気になり、色を答えるのに時間がかかることがあります。
ストループ効果とは、文字が表す色と実際の文字の色が食い違っているとき、文字の色を答える反応が遅くなるなどの影響が現れる現象です。言葉を読むことと色を答えることがぶつかる場面を通して、人が必要な情報だけに注意を向ける難しさを考えられます。
ストループ効果とは?文字の意味と実際の色がぶつかる
たとえば「赤」という文字が青色で書かれているとします。「書いてある言葉を読んでください」と言われれば「赤」と答えます。しかし「文字が何色で書かれているかを答えてください」と言われたら「青」です。同じ文字を見ても、何を答えるよう求められているかによって、注目すべき情報が違います。
色を答える課題では、次のような条件が比較されます。
- 色だけを見せる場合:青い四角形を見せて「青」と答える。
- 文字と色が一致する場合:「青」と書かれた青色の文字を見て「青」と答える。
- 文字と色が食い違う場合:「赤」と書かれた青色の文字を見て「青」と答える。
食い違う場合には、答えるべき色と、つい読んでしまう言葉の意味が異なります。読み慣れた言葉は、色だけを答えようとしても無関係な情報として簡単には切り離せず、返答に影響することがあります。Parrisら(2022)
なお、文字と色が一致する条件は、あとから広く使われるようになった比較方法です。1935年のストループの主要な実験では、色のついた四角形と、意味と文字色が食い違う色名の文字が比較されました。比較対象を区別することが、結果を正しく理解するうえで重要です。
研究で分かっていること
色を答えるとき、食い違う文字があると大きく遅れた
心理学者ジョン・リドリー・ストループは、1935年に、色の名前を読む課題と、文字の色を答える課題を比較しました。色を答える実験には大学生と大学院生の計100人が参加しました。参加者は、色のついた小さな四角形の色を次々に答える場合と、色名を表す文字が別の色で印刷されているものの文字色を答える場合に取り組みました。
100個の色を答えるのにかかった平均時間は、四角形の場合が63.3秒、言葉と文字色が食い違う場合が110.3秒でした。つまり、後者は平均47.0秒長く、四角形の場合より約74%長い時間がかかりました。これは、この実験の参加者と課題で得られた差です。誰が試しても同じ秒数だけ遅くなるという意味ではありません。Stroop(1935)
言葉を読む場合には、色の影響は小さかった
ストループは別の実験で、大学生70人に、黒色で印刷された色名を読む場合と、単語の意味とは違う色で印刷された色名を読む場合を比べてもらいました。
100個の色名を読む時間は、文字色が意味と異なる場合の方が平均2.3秒長くなりましたが、この差は研究で確かな違いとは判断されませんでした。色を答える課題で生じた大きな遅れとは対照的です。文字を読む習慣が、色を答える作業に強く入り込みやすいという現象の特徴が見えてきます。Stroop(1935)
練習しても、影響は完全には消えなかった
さらにストループは、文字の意味を無視して色を答える練習を繰り返す実験も行いました。参加者は8日間、1日200回ずつ、意味と文字色が食い違う言葉の色を答える練習に取り組みました。
練習を続けると色を答えるのが速くなり、言葉から受ける影響も小さくなりました。しかし、影響は完全には消えませんでした。言葉に引っ張られやすさは変化し得るものの、一定の練習をすれば必ずなくなるわけではないことを示す結果です。Stroop(1935)
現在の研究では、一つの理由だけで説明しない
MacLeod(1991)は、ストループ効果に関する約400件の研究を振り返り、繰り返し確認される18の研究結果を整理しました。「言葉は色より速く処理されるから」「文字は習慣的に読んでしまうから」という説明だけでは、それらを十分に説明できないと指摘しています。MacLeod(1991)
その後の研究を検討したParrisら(2022)は、言葉の意味と文字色が食い違うことに加え、「文字を読む」という慣れた作業と「色を答える」という求められた作業との間にもぶつかり合いがあると整理しています。比較に使う条件や回答の方法によって、観察される遅れの大きさも変わります。Parrisら(2022)
また、文字と色が一致する条件では、文字の意味が色を答える助けになることもあります。そのため、一致する条件と食い違う条件の差だけを見ると、食い違いによる遅れに、一致することによる助けも含まれる場合があります。実験で何と何を比べたのかが大切です。Parrisら(2022)
身近な場面で考える
たとえば、色分けされたカードを使うゲームで、文字に「赤」と書いてあるのにカードの文字色は青色だったとします。参加者が「書かれた文字を読まず、文字の色だけを答える」というルールで遊ぶと、言葉と色の違いに戸惑うかもしれません。これはストループ効果の課題を身近な場面に置き換えた仮の例です。
色の情報を正確に伝えたい場面では、文字が表す色と実際の表示色を食い違わせないなど、読み手に二つの違う答えを示さない工夫が考えられます。ただし、こうした工夫がどの資料でも同じだけ誤答を減らすと、ここで紹介した実験から直接決められるわけではありません。
ストループ効果を試してみて色を答えるのが遅くなったとしても、それだけで個人の集中力や能力を判断することはできません。結果は、文字を読むことへの慣れや、どのように答えるか、何を比較対象とするかにも関係します。
ストループ効果が示すのは、答えに必要な情報に注意を向けようとしても、同時に目に入る別の情報が判断に影響し得るということです。文字の意味と色の食い違いは、その働きを分かりやすく示しています。
参考文献・出典
- Stroop, J. R. (1935). Studies of interference in serial verbal reactions. Journal of Experimental Psychology, 18(6), 643–662. 色名を読む課題、文字色を答える課題、練習による変化を比較した原典の全文。
- MacLeod, C. M. (1991). Half a century of research on the Stroop effect: An integrative review. Psychological Bulletin, 109(2), 163–203. 約400件の研究から18の安定した結果を整理し、言葉を読む速さや習慣だけでは説明しきれない点を検討した総説。
- Parris, B. A., Hasshim, N., Wadsley, M., Augustinova, M., & Ferrand, L. (2022). The loci of Stroop effects: A critical review of methods and evidence for levels of processing contributing to color-word Stroop effects and the implications for the loci of attentional selection. Psychological Research, 86, 1029–1053. 意味と色の食い違い、作業同士のぶつかり合い、比較条件による解釈の違いを検討した総説。