フォン・レストルフ効果とは?周囲と異なるものが記憶に残りやすい理由
いくつかの言葉を続けて見たとき、一つだけ種類の違う言葉が後になっても思い出せることがあります。似たものが並んだ中に異なるものがあると、記憶はどのように変わるのでしょうか。
フォン・レストルフ効果とは、似た項目が並ぶ中に一つだけ異なる項目があると、その項目が後で思い出されやすくなる現象です。「孤立効果」とも呼ばれます。ただし、周囲と違っていればどんな条件でも覚えやすくなるわけではありません。
フォン・レストルフ効果とは?何と比べて目立つのか
たとえば、二つのグループに短い言葉の一覧を覚えてもらう場面を考えます。一方には「りんご・みかん・傘・ぶどう・もも」、もう一方には「帽子・手袋・傘・靴・かばん」という一覧を見せます。どちらにも「傘」が入っていますが、果物が並ぶ最初の一覧では、傘だけが種類の違うものです。一方、二つ目は外出するときに使うものが並んでいるため、傘も周囲の項目と共通点があります。後で傘を思い出せるかを比べると、最初の一覧に入っていた方が覚えている場合があります。これは現象を理解するための仮の例です。
大切なのは、傘という言葉が単独で特別なのではなく、周囲にどのような項目が並んでいたかによって、その言葉の違いが生まれることです。研究では、同じ項目がほかの項目と似ている場合と、周囲の中で一つだけ異なる場合を比べて、後から思い出す成績を調べます。違いは言葉の種類だけでなく、文字の色や大きさでも作られます。Hunt(1995)
一つだけ色を変えれば目を引きますが、フォン・レストルフ効果は「視線を集めたから必ず覚えられる」という単純な話ではありません。周囲の項目に共通する特徴があることや、後で思い出すときにほかの項目と区別できることも関係すると考えられています。Hunt(1995)
研究で分かっていること
1933年の研究から、周囲との違いが記憶の手がかりと考えられた
ドイツの研究者ヘドウィク・フォン・レストルフは、1933年に、並んだ情報の中で孤立した項目が、ほかの項目よりよく覚えられる現象を報告しました。後にこの現象は研究者の名前で呼ばれるようになりました。MacLeod(2020)
当時の研究を詳しく検討したHunt(1995)は、フォン・レストルフが、孤立した項目が見た瞬間に目立つことだけでは効果を説明できないと考えていた点を指摘しています。異なる項目が記憶に残るかを考えるには、その項目だけでなく、残りの項目同士がどれほど似ているかにも目を向ける必要があります。Hunt(1995)
言葉の色を変えた場合には、思い出す成績が上がった
Wiswedeら(2006)は、ドイツの大学に通う女性18人分のデータを分析し、12個ずつ並んだ言葉の記憶を調べました。それぞれの言葉の背後には写真が表示されており、一つの言葉だけ文字色を変える場合と、一つの言葉の背景だけ感情を強く揺さぶる不快な写真にする場合などを設けました。その後、覚えている言葉を答えてもらいました。
一覧の中ほどにあった言葉を比べると、文字色を変えた言葉は、通常の言葉より多く思い出されました。一方、不快な背景写真が付いていた言葉には、通常の言葉と比べて明確な記憶の改善が見られませんでした。違いを付ける方法によって、覚えたい言葉への影響が変わったのです。Wiswedeら(2006)
この実験では、変わっていたのが覚える対象である文字自体の色なのか、その後ろに置いた写真なのかも異なります。背景を強く目立たせることと、覚えたい情報を区別しやすくすることは同じではありません。
周囲と違うだけでは、記憶がよくならない条件もある
SchmidtとSchmidt(2017)は、三つの実験で、並んだ言葉の中に種類の異なる項目を入れ、その項目が一覧の最初の方にある場合と途中にある場合などを比べました。
ほかと意味上の種類が違う言葉は、一覧の途中では覚えられやすい場合がありました。しかし、最初の方に置いた場合には、同じ項目を似た種類の言葉の中に入れた場合よりも、かえって記憶の成績が下がる条件が見られました。一方、言葉の一覧に数字を一つだけ入れる場合や、数字の一覧に言葉を一つだけ入れる場合には、一覧の初めの方でも孤立した項目が覚えられやすくなりました。SchmidtとSchmidt(2017)
つまり、違いの種類だけでなく、項目が一覧のどこに現れるかも結果に関わります。目立つ情報への注意の向き方と、後から思い出す際の手がかりの両方を考える必要があります。
身近な場面で考える
たとえば、勉強会で10個の単語を載せたプリントを配り、一つの重要な単語だけ文字色を変えたとします。参加者は一覧を読んだ後、その単語をほかと区別して思い出しやすくなるかもしれません。これは、言葉の色を変えた実験を日常の場面に置き換えた仮の例です。
ただし、資料全体を覚えてほしい場合、色を変えた一語だけが記憶に残っても目的を果たせません。また、強い印象を与える写真を背景に使ったからといって、そこに重ねた言葉まで覚えやすくなるとは限りません。覚えてほしいもの自体が何なのかを明確にし、必要な情報を確認する機会を別に設けることが考えられます。
フォン・レストルフ効果から分かるのは、情報の覚えやすさは、その情報だけでなく周囲との関係によっても変わるということです。何かを「目立たせる」場合には、どの情報を何と違うものにしているのかまで考えると、この現象をより正確に理解できます。
参考文献・出典
- MacLeod, C. M. (2020). Zeigarnik and von Restorff: The memory effects and the stories behind them. Memory & Cognition, 48, 1073–1088. フォン・レストルフが1933年に報告した現象の歴史的な位置付けを確認するための研究史。
- Hunt, R. R. (1995). The subtlety of distinctiveness: What von Restorff really did. Psychonomic Bulletin & Review, 2(1), 105–112. 孤立効果を、周囲の項目の似かたや、見た目の目立ちやすさと区別して解説した論考。
- Wiswede, D., Rüsseler, J., Hasselbach, S., & Münte, T. F. (2006). Memory recall in arousing situations – an emotional von Restorff effect? BMC Neuroscience, 7, 57. 文字色を変えた言葉と、感情を強く動かす背景写真を付けた言葉について、後の記憶を比較した実験。
- Schmidt, S. R., & Schmidt, C. R. (2017). Revisiting von Restorff’s early isolation effect. Memory & Cognition, 45, 194–207. 項目の種類と一覧中の位置を変え、孤立した項目の記憶がよくならない条件も検討した研究。