選択盲とは?自分が選んだ結果のすり替えに気づかないことがある心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

二枚の写真から気に入った方を選んだあと、選ばなかった写真を「あなたが選んだものです」と見せられたら、すぐに気づくでしょうか。実験では、選んだ結果をこっそり入れ替えられても、その違いを指摘せず、渡された写真を選んだ理由まで説明する人がいました。こうした現象を「選択盲」と呼びます。

選択盲とは?

選択盲とは、自分が選んだものと、選択後に提示されたものが食い違っていても、その違いを指摘しないことがある現象です。心理学者のヨハンソンらが2005年に、二枚の顔写真から好みの方を選ぶ実験で報告しました(Johanssonほか, 2005)。

選択盲の実験では、参加者が何を選んだかを研究者が確認したうえで、選ばなかった方を「選んだ結果」として提示します。そこで参加者が入れ替えを指摘するか、提示された結果についてどんな理由を話すかを調べます。

たとえば、最初は左の写真を指さしたのに、あとから右の写真を渡され、その右の写真について「表情がいいから選んだ」と説明した場合です。説明をしたからといって、最初から右の写真を選んでいたことにはなりません。最初の選択と、あとから示された結果、その理由の説明を分けて考えることが重要です。

関連する「変化盲」は、目の前の場面が変わっても違いに気づかない現象です。選択盲では特に、変わったのが「自分で選んだはずの結果」であり、その結果について理由まで説明する場合があることに注目します。

研究では何が確かめられたのか

2005年:顔写真の選択結果を入れ替える実験

ヨハンソンら(2005)は120人に、女性の顔写真を二枚ずつ見せ、より魅力的だと感じる方を指さして選んでもらいました。一人につき15組の写真を提示し、そのうち3組では、選ばなかった方の写真を渡す仕掛けを使いました。参加者には、渡された写真を選んだ理由も尋ねました。

実際に入れ替えを行った354回のうち、その場で参加者が違いを指摘したのは46回、約13%でした。その場で指摘しなかった場面では、渡された写真の顔立ちなどを挙げて選択理由を説明することもありました(Johanssonほか, 2005)。

これは、参加者の約87%が一度も気づかなかったという意味ではありません。13%は、写真を入れ替えた回数のうち、その場で見抜かれた回数の割合です。実験後の聞き取りで違いに気づいた場合もありました。

2010年:ジャムの味やお茶の香りでも起きるのか

ホールら(2010)は、スーパーマーケットに立ち寄った買い物客180人に、二種類のジャムの味や二種類のお茶の香りを比べて、好きな方を選んでもらいました。研究者は上下に別の品が入った特殊な容器を用意し、参加者が最初に味や香りを確かめる間に、容器をひっくり返していました。そのため、選択後にもう一度試してもらったのは、選んだと思っている品ではなく、実際には選ばなかった方でした。研究者は、その品を好んだ理由も尋ねました。

録音の問題で3人を分析から除くと、すり替えた試行のうち、その場でおかしいと訴えた割合はジャムで約14%、お茶でも約14%でした。実験後に入れ替えに気づいたと述べた場合や、すり替えには言及せず、二度目の味や香りが最初と違うと表現した場合まで合わせると、研究者が変化を捉えたと分類した割合はジャムで約33%、お茶で約32%でした。約3分の1という数字は、その場ですり替えをはっきり指摘した割合ではありません(Hallほか, 2010)。

2014年:すり替えへの気づきと、その後の好み

タヤら(2014)は32人に、画面上で二枚の顔写真から魅力的な方を選んでもらいました。一部の回では、選ばなかった写真を選択結果として表示し、理由を文字で入力してもらいました。入れ替えた160回のうち、その場で指摘されたのは約17%でした(Tayaほか, 2014)。

さらに、後から見せられた方の写真を短期的に高く評価する方向の変化も見られました。しかし、再評価に参加した25人については、約2週間後に同じ写真を評価しても、その変化は維持されませんでした。すり替えに気づかないことと、好みが長く変わることは同じではありません。

すり替えに気づくかどうかは何で変わるのか

誰もが必ずすり替えを見落とすわけではありません。2016年の研究では、見慣れない人物の顔写真を同じ人のものかどうかで分類した後、判断した組み合わせを入れ替えて示しました。最初の実験では50人を対象に調べ、入れ替えへの気づきは約21%でした。別の実験では、判断が容易な場合や、自分の判断への自信が高い場合の方が、入れ替えに気づきやすい結果でした(Sauerlandほか, 2016)。

また、2014年の研究では、一度すり替えを発見すると、その後のすり替えも指摘しやすくなりました(Tayaほか, 2014)。2025年の別の研究では、実験者があまり信頼できないように見える状況を作ると、すり替えを指摘する割合が高くなりました(Marchantほか, 2025)。選ぶ課題の難しさだけでなく、相手をどのくらい信用しているかも、違いを伝える行動に関わります。

指摘しなかった人は、本当に気づいていなかったのか

選択盲の研究で数えられてきた「その場で気づいた回数」は、主に参加者が入れ替えを言葉や行動で指摘した回数です。違いを指摘しなかったことと、本人が何の違いも感じなかったことは、同じではありません。

グラッシら(2025)は、選択結果を入れ替える二つの実験で、参加者の報告だけでなく、目の瞳孔が広がる反応も測りました。その場では違いを指摘しなかった場面でも、あとから入れ替えを思い出せる場合がありました。また、入れ替えた場面には瞳孔の反応の違いも見られました。研究者らは、違いを捉えていても、その場では言い出さない場合があると解釈しています(Grassiほか, 2025)。

ただし、瞳孔の変化だけで、参加者がどの程度はっきり違いを意識していたかまで確定できるわけではありません。2005年の原著は、なぜこの現象が起こるかを実験だけで断定できないと述べています(Johanssonほか, 2005)。入れ替えを見落とした可能性と、何かおかしいと感じても言わなかった可能性の両方を考える必要があります。

なぜ、選んでいないものの理由まで説明するのか

渡された写真や品物を自分の選択結果だと思えば、目の前にあるものの特徴を手がかりに、理由を説明することが考えられます。反対に、違いを感じても、実験者を疑いにくい状況や、言い直すことへのためらいが、報告に影響する可能性もあります。

研究で確認されたのは、入れ替えを指摘せず、選んでいないものの理由を話す場合があるという事実です。その理由を話した人が必ず元の選択を忘れたとか、意識して嘘をついたとは言えません。どうしてそうした説明が生まれるかについては、研究によって解釈が分かれています。

身近な場面で考える

たとえば、旅行先の宿を選ぶため、ある人が二つの部屋の写真を比べ、「窓が大きい方」を選んだとします。その直後、画面が切り替わり、選ばなかった部屋が「あなたが選んだ部屋」と表示されたらどうでしょうか。写真の違いに気づかず、表示された部屋の内装を見ながら、こちらを選んだ理由を説明してしまうかもしれません。

これは選択盲を理解するための仮の例です。紹介した研究で、宿泊予約の画面を使って同じ現象を確かめたわけではありません。

選択盲の研究が示しているのは、自分で選んだ結果が入れ替わっても、その違いがその場では指摘されないことがあるということです。大切な選択では、何を選んだかと、実際に示された結果を別々に確かめることが、一つの工夫として考えられます。

参考文献・出典