選択支持バイアスとは?選んだものを良く思い出す記憶の偏り

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

二つの宿を比べて一つを予約したあと、しばらくして選んだ理由を思い出すとします。最初はどちらにも良い点と気になる点があったのに、選んだ宿の良い条件ばかりが思い浮かんだり、もう一方の長所を選んだ宿の特徴として思い出したりするかもしれません。選択支持バイアスとは、過去に自分が選んだものを支持する方向に、選択肢の特徴についての記憶が偏る傾向です。

選択支持バイアスとは?

選択支持バイアスは、何かを選んだあと、その選択肢の良い特徴を実際以上に多く結び付けたり、選ばなかったものの悪い特徴を結び付けたりして思い出す、記憶の偏りを指します。心理学では、選択を支持する方向に過去の情報を思い違える現象として研究されています(Matherほか, 2000)。

ここで大切なのは、「どんな特徴があったか」と「その特徴はどちらの選択肢にあったか」は別の記憶だということです。たとえば、宿Aは静かだが料金が高く、宿Bは駅に近いが騒がしいとします。宿Aを選んだ人が、後から「駅に近かったのは宿Aだった」と思い出せば、良い特徴を別の宿から取り違えています。

これは、選んだ宿を今も気に入っているという感想だけの話ではありません。実際の選択肢に書かれていた条件と、後から本人がどちらにあったと答えたかを比べて、記憶のずれを調べる現象です。なお、選んだ結果そのものを他人にすり替えられても指摘しないことがある「選択盲」とは、研究で調べる場面が異なります。

研究では何が確かめられたのか

2000年:選んだものに良い特徴を結び付けて思い出す

メイザーら(2000)は、仕事の候補者、同居相手、デートの相手など、二つの候補のどちらかを選ぶ複数の実験を行いました。候補にはそれぞれ良い特徴と悪い特徴があり、参加者はどちらかを選ぶか、一方を断るよう求められました。その後、別の課題を挟んでから、示された特徴がどちらの候補にあったか、あるいは最初には出てこなかった特徴かを答えました。

その結果、各実験では全体として、選んだ候補の方に良い特徴を多く結び付ける方向の回答が見られました。実際にどちらの候補にあったかを間違えた回答にも、その偏りが表れました。選ばなかった候補に悪い特徴を結び付ける傾向も見られましたが、選んだものに良い特徴を結び付ける偏りの方が、より一貫して強く表れました(Matherほか, 2000)。

実験では、最初に提示されていなかった特徴を記憶課題に混ぜた場合もありました。ただし、そのような新しい特徴を選んだ候補に結び付ける偏りは、すべての場面で同じように確認されたわけではありません。

2003年・2006年:自分で選ぶことは重要なのか

メイザーら(2003)は、自分で二つの選択肢から選ぶ状況と、選択肢を割り当てられる状況の記憶を比較しました。自分で選んだ場合には選択を支持する記憶の偏りが見られましたが、単に一つを割り当てられた場合には、同じ形の偏りは確認されませんでした。割り当てられたものについては、選んだものを良く思い出すのとは異なる取り違え方が見られました(Matherほか, 2003)。

ただし、自由に選んだ場合にしか起こらないとは言えません。ベニーとヘンケル(2006)の研究では、本人の性格に合うものが選ばれたと説明されて割り当てられた参加者にも、受け取った選択肢を支持する方向の記憶が見られました。一方、無作為に割り当てられたと説明された場合には、同じ偏りは見られませんでした(Benney & Henkel, 2006)。

こうした結果は、実際に選ぶという行動だけでなく、なぜその選択肢が自分のものになったと思っているかも、後からの記憶に関係することを示しています。

2007年:「自分が選んだ」と思い込んだ方に記憶が寄る

ヘンケルとメイザー(2007)は、以前の選択について思い出すとき、実際に選んだものと、本人が選んだと思っているものが食い違う場合を調べました。一つの実験では、以前の選択を間違えて覚えていた参加者について、どちらの候補に良い特徴を結び付けるかを調べました。別の実験では、選ばなかった方を「あなたが選んだもの」と誤って伝えるなどして、本人の思い込みを変えました。

その結果、実際にどちらを選んだかよりも、思い出す時点で「自分が選んだ」と信じている方に、良い特徴を結び付ける傾向が見られました(Henkel & Mather, 2007)。過去の情報を思い出す際、現在の思い込みが手がかりになっている可能性を示す結果です。

なぜ記憶が選んだものに有利になるのか

私たちは過去の特徴を思い出すとき、その内容だけでなく「どちらに書かれていた情報だったか」も判断します。はっきり思い出せない場合には、「自分が選んだ方には良い点が多かったはずだ」という見込みが、特徴の持ち主を推測する手がかりになると考えられます。2007年の研究は、実際の選択と違う思い込みでも偏りが生じることから、思い出すときの判断が関わるという説明を支えています(Henkel & Mather, 2007)。

ほかにも、選んだことを後悔したくない気持ちや、選ぶ前から良い特徴に注目していたことが関わるという説明があります。ただし、どの働きがどれほど大きいかは、研究上まだはっきり分かっていません(Lindほか, 2017)。

どのような記憶の偏りまで確かめられているのか

リンドら(2017)は、選択後の記憶に関する研究を整理しました。その結果、良い特徴がどちらの選択肢にあったかを取り違える偏りについては、特徴を見せて持ち主を答えてもらう実験で比較的確かな証拠がありました。一方、都合の悪い情報を忘れやすくなること、情報そのものを実際と違う内容で覚えること、提示されなかった特徴まで覚えていたと感じることについては、研究の数や結果が限られていました(Lindほか, 2017)。

また、日常のように手がかりなしで自由に思い出すときにも同じ偏りがどれほど起こるかは、十分には確かめられていません。選択支持バイアスは、過去に選んだものを誰もが必ず良く思い出すという決まりではなく、特に選択肢の特徴を後から照合する場面で繰り返し見られた記憶の傾向です。

身近な場面で考える

たとえば、家族旅行のために宿Aと宿Bを比較している人がいるとします。宿Aは静かで、宿Bは駅から近いという説明を見たうえで、宿Aを予約しました。後日、友人に選んだ理由を聞かれ、「静かだったし駅からも近かった」と答えたとします。もし駅への近さが宿Bの特徴だったなら、選択支持バイアスに関わるような記憶の取り違えの例として考えられます。

これは研究を説明するための仮の場面です。宿選びで同じ取り違えが必ず起こると実証したものではありません。後から選択を振り返る必要があるときは、比較した条件や選んだ理由を記録に残しておけば、自分の記憶と当時の情報を比べられます。記録することでバイアスが必ず防げると研究で確かめられたわけではありませんが、思い違いを確かめる手がかりにはなります。

選択支持バイアスは、過去の選択を思い出す際に、自分が選んだという事実が、選択肢の特徴の記憶にも関わることを示しています。

参考文献・出典

  • Mather, M., Shafir, E., & Johnson, M. K. (2000). Misremembrance of options past: Source monitoring and choice. Psychological Science, 11(2), 132–138. 候補を選んだあと、良い特徴や悪い特徴をどちらの候補に結び付けて思い出すかを調べた複数の実験。
  • Mather, M., Shafir, E., & Johnson, M. K. (2003). Remembering chosen and assigned options. Memory & Cognition, 31(3), 422–433. 自分で選んだ場合と、割り当てられた場合の記憶の違いを比較した研究。
  • Benney, K. S., & Henkel, L. A. (2006). The role of free choice in memory for past decisions. Memory, 14(8), 1001–1011. 自由に選んだ場合、無作為に割り当てられた場合、本人に合うとして割り当てられた場合の記憶を比較した研究。
  • Henkel, L. A., & Mather, M. (2007). Memory attributions for choices: How beliefs shape our memories. Journal of Memory and Language, 57(2), 163–176. 実際に選んだものと、選んだと思い込んでいるものが食い違ったときの記憶を調べた研究。
  • Lind, M., Visentini, M., Mäntylä, T., & Del Missier, F. (2017). Choice-supportive misremembering: A new taxonomy and review. Frontiers in Psychology, 8, 2062. 選択後の記憶の取り違えと、その他の記憶の偏りについて、根拠の強さや説明上の課題を整理した総説。