ピエロンの法則とは?刺激の強さと反応にかかる時間の関係

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

暗い場所で小さな光がついたとき、弱い光より明るい光のほうが素早く気づけることがあります。心理学の実験でも、光がついたらすぐにボタンを押すよう求めると、光が強いほど反応するまでの平均時間が短くなる関係が見られます。この関係を表すのが「ピエロンの法則」です。

ピエロンの法則とは?

ピエロンの法則とは、光などの刺激が強くなるにつれて、刺激が現れてから人が反応するまでの平均時間が短くなる関係を表したものです。「反応時間」は、たとえば画面に光が現れた瞬間から、参加者がボタンを押すまでの時間を指します。一度だけの速さではなく、同じ条件で何度も測った結果から傾向を調べます。

この法則では、刺激を強くするほど反応時間が短くなる一方、強さを増した分だけ同じ割合で時間が短くなるとは考えません。一般に、強い刺激になるほど短縮の幅が小さくなり、反応時間が一定の値に近づいていく形の曲線で表されます。明るさを2倍にすれば反応時間が半分になる、という関係ではありません。また、光がいくら強くなっても、反応にかかる時間がゼロになるわけではありません(Piéron, 1913、Pins & Bonnet, 1996)。

重要なのは、同じ種類の刺激と同じ反応の課題について、刺激の強さを変えて比べることです。たとえば、光の明るさを変えた実験の結果から、音やにおい、日常のあらゆる場面でも同じ速さの変化が起こるとは言い切れません。

研究では何が確かめられているのか

20世紀初め:刺激を強くすると反応時間が短くなる

心理学者アンリ・ピエロンは、感覚への刺激の強さと、反応までにかかる時間の関係を調べました。1913年の論文では、刺激を強めると反応時間が短くなることを、異なる感覚への刺激も含めて研究する目的を示しています。これが後に「ピエロンの法則」と呼ばれる関係の出発点になりました(Piéron, 1913)。

1996年:光を見つけるだけでなく、選ぶ課題でも調べた

ピンズとボネ(1996)は、光の明るさを5段階に変え、反応までの時間を調べました。光が現れたら反応する課題に加えて、光が現れた位置や、図形の向きなどに応じて答えを選ぶ課題も使っています。

答えを選ばなければならない課題では、単に光に反応する課題より平均反応時間が長くなりました。しかし、明るさが変わったときの反応時間の短くなり方は、調べた課題の間で似ていました。この研究では、ピエロンの法則に沿う関係が、単純な反応だけでなく、選択を伴う反応にも見られました(Pins & Bonnet, 1996)。

2000年:非常に弱い光では関係の形が変わった

同じ研究者たち(2000)は、暗い環境での弱い光を使い、光の位置を選んで答える課題を調べました。反応時間だけでなく、答えが正しかったかも記録しています。

その結果、光が見えるかどうかの境目に近い、非常に弱い明るさでは、明るさと反応時間の関係を表す曲線の変化が、もっと明るい範囲とは大きく異なりました。弱い光では、光を見つけられるかどうかの不確かさも関係すると考えられています(Pins & Bonnet, 2000)。

この結果から、一定の計算式が、見えるかどうかぎりぎりの光から十分に明るい光まで、すべて同じように当てはまるとは限らないことが分かります。

2012年:明るさを変えなくても似た関係は現れるのか

ファン・マーネンら(2012)は、大学生6人に、画面上の点の集まりがどちらの方向へ動いて見えるかを二つの候補から選んでもらいました。この実験では光の強さを変えず、二つの候補の方向をどれほど離して示すかを変えています。候補の方向が離れて、見分けやすくなるほど、平均反応時間が短くなりました。その変化は、ピエロンの法則に似た曲線で表せることが報告されています(van Maanenほか, 2012)。

これは刺激の強さを変えた実験ではありません。刺激が強い場合だけでなく、答えの見分けやすさが増した場合にも、似た時間の変化が生じ得ることを調べた研究です。

反応が速くなる理由は分かっているのか

光が現れてからボタンを押すまでには、光に関する情報を受け取り、何をするか判断し、手を動かす過程があります。刺激を強めたときに、これらのどの過程がどれほど速くなるのかは、反応時間の変化だけでは決められません。

ドンキンとファン・マーネン(2014)は、反応時間と正答・誤答の記録を使った3組のデータについて、「判断を進める仕組みだけでピエロンの法則に似た関係を説明できるか」を調べました。3組のうち1組はその説明と合いましたが、残る2組はそれだけでは十分に説明できず、刺激が知覚される段階の影響も考える必要がありました(Donkin & van Maanen, 2014)。

つまり、ピエロンの法則は刺激の強さと反応時間の関係を示す研究上の規則性であり、短くなる理由が一つだけに決まったという意味ではありません。

身近な場面で考える

たとえば、家で使う機器に、動作が終わるとランプがつく仕組みがあり、その点灯に気づいた人がボタンを押すとします。同じ人が同じ場所で見ていて、ランプの明るさだけが違うなら、弱い光のときより明るい光のときのほうが、点灯からボタンを押すまでの時間が短くなるかもしれません。これは法則を身近な状況に置き換えた仮の例です。

ただし、実際の生活では、ほかのことに注意を向けていたか、周囲がどれほど明るいか、何のボタンを押すか迷うかなども関わります。紹介した研究は、機器のランプを明るくすれば、どの場面でも反応が速くなると確かめたものではありません。

ピエロンの法則を知ると、私たちが合図に反応する速さには、判断する内容だけでなく、目や耳に届く刺激の強さも関わる場合があると理解できます。

参考文献・出典