ゴルディロックス効果とは?赤ちゃんが単純すぎず複雑すぎない情報に注目する現象

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

赤ちゃんが、箱からおもちゃが出たり隠れたりする映像を見ているとします。同じことが続きすぎても、予想外のことが次々と起きても、途中で目をそらすことがあります。生後7〜8か月の赤ちゃんを調べた研究では、次に何が起こるかを少しは予想できるものの、完全には分からない出来事に、注意を向け続けやすい傾向が見られました。これを「ゴルディロックス効果」と呼びます。

ゴルディロックス効果とは?

ゴルディロックス効果とは、続いて起こる出来事が簡単に予測できすぎても、予測しにくすぎても視線を外しやすく、その中間の予測しやすさでは注意を向け続けやすいという傾向です。「ゴルディロックス」という名前には、単純すぎず複雑すぎない「ちょうどよい」状態という意味が込められています。

ここでいう単純さや複雑さは、絵の色数や形の細かさを指すわけではありません。それまでに見聞きした出来事から、次の出来事をどれほど予測しやすいかが問題になります。

たとえば、箱を開けるたびに同じおもちゃが出てくれば、次も同じだと予想しやすくなります。一方、いつも同じおもちゃが出ていたのに、突然何も出てこなければ、予想が大きく外れます。研究者は、こうした一回ごとの出来事が、それまでの流れからどれほど予測しやすかったかを計算し、赤ちゃんが目をそらすタイミングとの関係を調べました(Kiddほか, 2012)。

予測のしやすさは、それまで何を見たかによって変わります。そのため「このおもちゃは赤ちゃんにとって必ずちょうどよい」と、物だけで決まるものではありません。

研究では何が確かめられたのか

2012年:映像のどの場面で目をそらすのか

キッドら(2012)は、生後7〜8か月の赤ちゃんを対象に、二つの実験を行いました。一つ目は42人に、箱が開くたびにおもちゃが出たり出なかったりする映像を見せました。二つ目は30人に、三つの箱のうちどれか一つからおもちゃが現れる映像を見せました。

研究者は、映像全体を見た長さだけでなく、どの出来事の直後に赤ちゃんが画面から目をそらしたかを調べました。さらに、直前までの出来事から次に何が起こりそうかを推定する計算方法を使い、各場面の予測しやすさを求めました。

二つの実験で、予測がとても簡単な出来事と、とても難しい出来事では、赤ちゃんが目をそらしやすくなる関係が見られました。一方、中ほどの予測しやすさでは、視線を保つ傾向がありました。これは、単純な繰り返しだけでなく、出来事の並びから生じる予想が、注意に関係することを示す結果です(Kiddほか, 2012)。

ただし、予測しやすさは研究者が計算した値です。赤ちゃんが頭の中でまったく同じ計算をしていると、直接確かめたわけではありません。

2014年:音の並びにも同じ傾向があるのか

キッドら(2014)は、生後7〜8か月の赤ちゃんに、人の話し声ではない実験用の音が次々に鳴る場面を示して調べました。画面では箱が開閉して同じおもちゃが繰り返し見え、そのたびに鳴る音だけが順番に変わる仕組みです。赤ちゃんが画面から目をそらす時点を調べることで、音の並びと注意の関係を確かめました。

その結果、直前の音から次の音をどれくらい予測できるかが、目をそらすタイミングに関係していました。音が予測しやすすぎる場合や予測しにくすぎる場合より、中ほどの予測しやすさで注意を続けやすいという結果です。視覚的な出来事だけでなく、音の並びでも同様の傾向が報告されました(Kiddほか, 2014)。

2020年:予測しやすさのほかに何が関わるのか

ポリら(2020)は、生後8か月の赤ちゃん43人のデータを分析しました。画面の中央に出た形が、その後、四つの場所のどこかに現れる課題で、赤ちゃんの視線の動きと、画面を見続けるかどうかを調べています。

ここでも、現れる場所が予測しやすすぎる場合と予測しにくすぎる場合には、目をそらしやすい関係が見られました。ただし、研究者が複数の要因を比べたところ、新しい出来事によって予想をどれほど更新できるかという、学習の進み具合を表す計算上の指標の方が、目をそらすタイミングを強く説明しました(Poliほか, 2020)。

つまり、赤ちゃんの注意には、予測の難しさだけでなく、その出来事から新しく学べる余地も関わると考えられます。

赤ちゃん以外にも見られるのか

キュービットら(2021)は、3〜6歳の子ども72人に、四つの窓からそれぞれ異なる物の画像が次々に現れては引っ込む映像を見せ、どの場面で視線を外したかを調べました。この研究でも、予測しやすすぎる出来事や予測しにくすぎる出来事より、中ほどの予測しやすさの出来事に注意を向け続けやすい関係が確認されました(Cubitほか, 2021)。

一方、これらの実験から、年齢を問わずあらゆる場面で同じ傾向になるとは言えません。赤ちゃんが何に注目するかには、顔や声への関心、それまでの経験、疲れなども関わります。2012年の研究者らも、予測しやすさだけで注意のすべてが決まるとは考えていません(Kiddほか, 2012)。

また、視線を向け続けることと、実際にどれほど学んだかは同じではありません。ゴルディロックス効果の研究が中心的に調べたのは、出来事の予測しやすさと注意の続き方の関係です。

身近な場面で考える

たとえば、家族が生後8か月ごろの赤ちゃんと絵本を見ているとします。同じ動物が何度も現れるページを見ていたところ、次のページで少し違う動きが加わると、赤ちゃんがその変化を見つめるかもしれません。このように、予想できる部分と新しい部分がある場面は、ゴルディロックス効果の考え方に結び付けて捉えられます。

ただし、絵本のどのページが「ちょうどよい」かは、赤ちゃんの経験やそのときの状態によっても違うでしょう。紹介した実験は、特定の絵本の見せ方や、最も学習効果が高い遊び方を直接調べたものではありません。

ゴルディロックス効果が教えてくれるのは、赤ちゃんの注意が単に新しいものへ向かうだけでなく、それまでの経験からどのくらい予測できるかとも関わっているということです。

参考文献・出典