カテゴリー化の事例理論とは?過去に出会った具体例を使ってものを分類する考え方

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

初めて見る犬種を見て「犬だ」と判断するとき、以前に見た犬の姿が手がかりになっているかもしれません。カテゴリー化の事例理論は、過去に出会った一つひとつの例の記憶をもとに、新しく見たものをどの仲間に分けるか判断するという考え方です。

カテゴリー化の事例理論とは?過去に出会った例を手がかりにする考え方

「カテゴリー化」とは、ものや出来事を「犬」「猫」「乗り物」などの仲間に分けることです。この理論でいう「事例」は、たとえば以前に公園で見た一頭の犬や、家で飼っていた一匹の猫のような、実際に出会った個別の例を指します。

事例理論では、私たちはそうした例を、どの仲間に属していたかという情報とともに覚え、新しいものが現れたときに、記憶にある例との似ている程度を手がかりに分類すると考えます。新しいものが「犬」に属すると覚えた例にどれほど似ているかだけでなく、「猫」など別の仲間の例とどれほど似ているかも関係するという説明です(Medin & Schaffer, 1978)。

ここで大切なのは、同じ仲間の平均的な姿だけでなく、過去に出会った具体的なものの違いも判断の材料になり得るという点です。個々の例を必ず意識して思い出し、順番に比べていると主張する理論ではありません。以前の経験が、本人にははっきり思い出せなくても判断に関わる可能性があります(Murphy, 2016)。

プロトタイプ理論との違いは何か

ものを分類する考え方には、似ているようで着目する情報が異なる説明があります。

  • プロトタイプ理論:同じ仲間に共通する特徴をまとめた「典型的な姿」にどれほど近いかを手がかりにします。
  • 事例理論:以前に出会った個別の例が、今見ているものにどれほど似ているかを手がかりにします。

たとえば、初めて見る犬種の写真を見たとします。「犬はこういう顔や体つき」という全体的なイメージと照らし合わせるなら、前者の説明に近くなります。一方、「以前、近所で見たあの犬に顔が似ている」といった個別の経験が判断に関わるなら、後者の説明に近くなります。

また、ある場面では色が、別の場面では形が、仲間を見分ける重要な特徴になることもあります。ノソフスキーの1989年の研究では、こうした注目する特徴の違いを考慮した事例に基づく説明が、複数の分類課題の結果をよく予測しました(Nosofsky, 1989)。

研究で分かっていること

事例理論に関わる研究では、人がある仲間への分け方を学んだ後、覚えたものや初めて見るものをどう分類するかが調べられています。

1978年:典型に近いカードで間違いが多かった実験

メディンとシェーファーは、図形や簡単な顔の絵を使った四つの実験で、個別の例の記憶に基づく説明と、特徴をまとめて考える説明を比べました。

そのうち第2実験では、32人の参加者に、色・形・大きさ・数が異なる9枚の図形カードを、AとBの二つの仲間に分ける練習をしてもらいました。練習後には、覚えた9枚と新しい7枚について、どちらの仲間に属すると判断するかも調べました。

練習の結果、Aの典型的な特徴には比較的近いカードの方が、それより典型から離れた別のAのカードより、分類の間違いが多くなりました。後者は、Aのほかの具体例とよく似ている一方、Bの具体例とはあまり似ていませんでした。これは、仲間の典型像との近さだけでなく、個別の例との似方も分類のしやすさに関わるという事例理論の予測に沿う結果です。

ただし、この実験で新しいカードを分類した結果については、二つの説明の予測がともに比較的よく合い、練習中の間違いほど明確な差は見られませんでした。四つの実験を通じた分析では、個別の例を重視する説明の方が全体としてよく合う結果が報告されています(Medin & Schaffer, 1978)。

2022年:岩石の分類でも事例に基づく説明がよく合った

その後、ノソフスキーらは、実際の岩石の種類を学ぶ課題で、個別の例を使う説明と、種類ごとの代表的な姿を使う説明を比較しました。参加者が岩石の例を学び、初めて見る岩石を分類するときの結果を調べたところ、個別の例を使う説明の方が、観察された判断によく合いました。学習から時間を置いて調べる条件なども含む研究です(Nosofsky et al., 2022)。

この結果は、事例に基づく説明が、単純な図形だけでなく実際のものの種類を学ぶ場面でも役立つことを示しています。ただし、特定の岩石を見分ける課題での結果を、人が普段行うあらゆる分類にそのまま当てはめることはできません。

身近な場面で考える

たとえば、パン屋で見慣れない焼き菓子を見つけ、「マフィンだろうか、カップケーキだろうか」と迷う人がいるとします。その人は先週買ったマフィンの形や、以前食べたカップケーキの飾りを思い出し、目の前のお菓子がどちらの具体例に似ているかを手がかりに判断するかもしれません。これは事例理論の考え方を当てはめた仮の例です。

似ているという印象だけで、商品の正式な名前が決まるわけではありません。正確に知りたいなら、店の商品表示を確かめる必要があります。

事例理論を裏付ける研究の多くは、例を覚えて仲間を見分ける実験です。マーフィーは2016年の論文で、人がものの名前や意味を理解し、知識を使う働き全体を、個別の例の記憶だけで説明するのは難しいと論じています(Murphy, 2016)。事例理論は、私たちの分類の仕方の重要な一面を説明する考え方です。

参考文献・出典