真実性の錯覚とは?繰り返し聞いた情報を本当だと感じやすい心理

心理学の法則・効果
なるほど心理学編集部

同じ話を何度も聞くうちに、最初は確かかどうか分からなかったのに、「たしか本当だったはず」と感じたことはないでしょうか。

真実性の錯覚とは、以前にも見聞きした情報を、初めて接する情報よりも本当らしいと判断しやすくなる現象です。繰り返された内容が正しいとは限らなくても、見聞きした回数が真偽の判断に影響することがあります。

真実性の錯覚とは?繰り返しが判断に影響する仕組み

初めて読む文章と、一度読んだことのある文章を比べてみましょう。以前に読んだ文章は、次に出会ったときに内容を理解しやすく、なじみがあるように感じることがあります。こうした受け取りやすさを、情報が正しいという手がかりのように使ってしまうことが、真実性の錯覚を説明する有力な考え方の一つです(Fazio et al., 2015)。

たとえば、知らない土地についての説明を一度だけ聞いたときは、正しいかどうか判断できないかもしれません。その後、同じ説明を繰り返し見かけると、内容を確かめたわけではないのに、前より正しそうだと感じる場合があります。

心理学の研究で主に調べているのは、こうした「本当らしいと感じる程度」の変化です。情報を覚えたことと、根拠を確かめて正しいと分かったことは区別する必要があります。また、繰り返しの影響には複数の説明が提案されており、文章を読み取りやすくなることだけですべての結果が説明できると確定したわけではありません(Ye et al., 2026)。

1977年の実験では、何度も聞いた文をどう評価したのか

Hasher、Goldstein、Toppinoが1977年に報告した実験では、分析対象となった大学生40人に、歴史・スポーツ・芸術などに関する、もっともらしい文章を聞いてもらいました。文章には実際に正しいものと誤ったものが含まれていました。参加者は、各文章がどのくらい正しいと思うかを7段階で評価しました。

参加者は2週間ずつ間隔を空けて、計3回の評価を行いました。毎回60の文章が提示され、そのうち20の文章は3回とも登場し、残りの40の文章は各回で入れ替わりました。これによって、繰り返し聞いた文章と、新しく聞いた文章の本当らしさの評価を比較できるようにしたのです。

その結果、繰り返された文章は、回を重ねるほど正しいと評価されやすくなりました。この傾向は、実際に正しい文章だけでなく、誤った文章にも見られました。一方、繰り返されなかった文章では、評価の上昇は確認されませんでした(Hasher et al., 1977)。

ただし、参加者は全体として正しい文章を誤った文章より高く評価していました。研究が示したのは、真偽の区別がまったくできなくなるということではなく、実際の正しさとは別に、繰り返しによって評価が押し上げられるということです。

知っている事実やニュースにも起こるのか

「すでに正しい知識があれば、誤った話を何度聞いても影響されない」と考えるかもしれません。しかし、Fazioら(2015)の実験では、参加者が正しい答えを知っている事実と矛盾する文章でも、繰り返し読んだ文章のほうが初めて読む文章より本当らしく評価されました。

その実験では、大学生40人が最初に文章の面白さを評価し、その後、以前に読んだ文章と初めて読む文章について真偽を評価しました。実験後には、参加者が実際に正しい知識を持っていたかも調べています。正しい知識が頭にあっても、評価するときに必ずその知識を使うとは限らないことが示されました(Fazio et al., 2015)。

また、Pennycookら(2018)は、実際に出回った作り話のニュースの見出しを使って調べました。事前に一度見たことのある見出しは、初めて見る見出しより、後で正確だと評価されやすくなりました。この傾向は、最初に見た日の評価だけでなく、1週間後に評価した条件でも確認されました(Pennycook et al., 2018)。

ここでいう「評価が高くなる」は、見出しを見た人が全員その内容を信じたという意味ではありません。研究では、繰り返しに接した場合と初めて見た場合の評価の差を調べています。

繰り返せば、どんな情報でも本当らしくなるのか

2026年に発表されたYeらの研究は、1977年から2025年までの182の研究、計31,184人のデータをまとめて分析しました。その結果、繰り返された情報は新しい情報より本当らしく評価される傾向が、全体として確認されました。ただし、平均的な影響は大きなものではなく、文章の種類や最初に情報を見聞きしたときの条件によって差がありました(Ye et al., 2026)。

特に、情報を最初に見たときに「正しいかどうか」を判断するよう求められた研究では、ただ読んだり、内容とは関係のない評価をしたりした研究に比べて、後から生じる繰り返しの影響が小さい傾向にありました。一方で、単に「誤った情報が含まれるかもしれない」と注意されるだけでは、影響が安定して弱まるとは確認されていません。

また、Pennycookら(2018)の実験では、「地球は完全な正方形である」のように、極端にあり得ない文章については、繰り返しの影響が見られませんでした。したがって、誰もがどんな話でも繰り返し聞けば信じるという決まりではありません。繰り返しは判断を左右しえますが、その影響は情報の内容や受け取り方によって変わります。

身近な場面で考える

たとえば、ある人が地域の催しについて「入場料は無料です」という投稿を見かけたとします。後日、同じ文章を別の投稿でも何度か読みました。最初は料金を知らなかったのに、繰り返し目にするうちに「無料のはずだ」と感じるようになるかもしれません。

この例は説明のための仮の場面です。同じ説明を何度も見たという経験から生じた本当らしさは、主催者が料金を公表しているという根拠とは異なります。同じ投稿が何度も共有されているだけなら、独立した根拠が増えたとも限りません。

確かめる必要がある情報については、見覚えがあるかどうかに頼らず、主催者の案内など、その内容を確かめられる資料を見ることが役立ちます。研究でも、情報に最初に触れた段階で真偽を考える条件では、繰り返しの影響が小さくなる傾向が報告されています。ただし、実生活のあらゆる場面で判断の偏りを防げると実証された方法ではありません。

真実性の錯覚を知ることで、「何度も聞いた話だから本当らしい」という感覚と、「根拠を確かめたから正しいと判断できる」という状態を分けて考えやすくなります。

参考文献・出典

Hasher, L., Goldstein, D., & Toppino, T. (1977). Frequency and the conference of referential validity. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 16(1), 107–112. 正しい文章と誤った文章を繰り返し提示し、真偽の評価がどう変わるかを比較した原研究です。

Fazio, L. K., Brashier, N. M., Payne, B. K., & Marsh, E. J. (2015). Knowledge does not protect against illusory truth. Journal of Experimental Psychology: General, 144(5), 993–1002. 正しい知識を持っている場合でも、繰り返しが真偽の評価に影響することを調べた実験の根拠です。

Pennycook, G., Cannon, T. D., & Rand, D. G. (2018). Prior exposure increases perceived accuracy of fake news. Journal of Experimental Psychology: General, 147(12), 1865–1880. 作り話のニュースの見出しを使い、事前に見たことや内容のもっともらしさが評価に及ぼす影響を調べた実験の根拠です。

Ye, S., Attali, D., Ghazi, M., Cachia, A., Cassotti, M., & Borst, G. (2026). Systematic review and meta-analysis of the evidence for an illusory truth effect and its determinants. Nature Communications, 17, Article 3270. 182の研究をまとめ、繰り返しの影響の全体的な大きさと、最初に情報を受け取る条件などによる違いを検討した研究です。