共通領域の法則とは?同じ枠に入ったものをひとまとまりに見る仕組み
同じ大きさの丸印が横一列に六つ並び、二つずつ四角い枠で囲まれているとします。丸印の間隔がすべて同じでも、枠の内側にある二つを一組として見ることがあります。これは「共通領域の法則」と呼ばれる、もののまとまり方に関する見え方です。同じ囲まれた範囲に入っていることが、ものをひとまとまりとして見る手がかりになります。
共通領域の法則とは?
共通領域の法則とは、複数の点や図形があるとき、同じ枠や区切られた範囲の中にあるものどうしを、一つの組として捉えやすいという視覚の原理です。心理学者のスティーブン・パーマーが1992年に提案しました(Palmer, 1992)。
たとえば、黒い丸印が六つ等間隔で並んでいるだけなら、どこで二つずつ区切るかは決まりません。ところが、一番目と二番目、三番目と四番目、五番目と六番目をそれぞれ囲む枠を加えると、枠ごとの三組に見えやすくなります。丸印の色、大きさ、位置を変えなくても、周囲の区切りがまとまり方を変えるのです。
区切りは、必ずしも実線の四角である必要はありません。丸い囲みや、周囲とは異なる色の背景などでも、同じ範囲に属するという見え方が生まれる場合があります。ここでいう「同じ組」は、目で見たときのまとまりを指します。丸印が実際に同じ用途を持つという意味ではありません。
近さや色によるまとまりとは何が違うのか
私たちは、互いに近いものをまとめて見たり、同じ色や形のものをまとめて見たりもします。これらは点や図形どうしの距離、見た目の似かよい方を手がかりにする見え方です。一方、共通領域の法則では、点や図形の外側にある枠や背景との関係がまとまりの手がかりになります。
たとえば、丸印の間隔が狭い二つを別々の枠に入れ、それより離れた二つを同じ枠に入れたとします。この図では、近いものをまとめる見方と、同じ枠に入ったものをまとめる見方が食い違います。共通領域の法則が働くと、距離だけを考えた場合とは違う組み合わせに見えることがあります。
また、閉じた輪郭を一つの形として捉えやすいという「閉合の法則」とも、注目する点が異なります。共通領域の法則では、囲みそのものの形よりも、その内側にある複数のものが一緒に見えることが中心です。
研究では何が確かめられているのか
1992年:同じ領域の影響を示した図
パーマー(1992)は、点の並びに囲みを加えた図を示し、同じ枠の中の点が組として見えることを説明しました。枠によるまとまりが、点どうしの近さや明るさの似かよい方によるまとまりと食い違う図でも、枠の中の点を組として見る例が示されています。これは、枠の働きが単に距離や色の違いに置き換えられるものではないことを示す説明です(Palmer, 1992)。
さらに、透明な板と紙を使って点と囲みを違う奥行きに見せた例では、同じ奥行きの面にあると感じられる点と囲みが組になって見えました。このことから、画面上で線がどこを囲んでいるかだけでなく、点と囲みが空間のどこにあるように見えるかも関係すると考えられます。
2002年:まとまりの内側にある目標は見つけやすいのか
ベックとパーマー(2002)は、並んだ図形の中から、隣り合う同じ形の二つを探す課題を調べました。探す二つが同じまとまりの内側にある場合と、隣り合う別々のまとまりにまたがる場合を比べると、前者の方が速く見つけられました。実験では、共通領域のほか、距離や色、図形のつながりによるまとまりも調べています(Beck & Palmer, 2002)。
また、探す組が同じまとまりの中に出る割合を変えると、見つける速さの差も変わりました。この結果は、目に入る配置だけでなく、「目標がどこに現れやすいか」という予想も、まとまりを利用した探し方に関わることを示しています。ただし、これは図形を探す実験であり、枠を使えばどんな表示でも読み取りが速くなると確認したものではありません。
2015年:枠と距離の手がかりが一致する場合と食い違う場合
モントロとルナ(2015)は、距離の近さと共通領域という二つの手がかりが、同じ組み合わせを示す場合と、別々の組み合わせを示す場合を比較しました。それぞれの手がかりが単独でどのくらい強く働くかによって、組み合わせたときの結果も変わりました(Montoro & Luna, 2015)。
つまり、同じ枠に入っているからといって、いつでも距離の近さより優先されるわけではありません。二つの手がかりがそれぞれ単独で働く強さが近い場合には、同じ組み合わせを示すと一方だけの場合よりまとまりが強くなり、食い違うと弱くなりました。一方、強さに大きな差がある場合には、二つが同じ組み合わせを示しても、強い方だけの場合と大きな差は見られませんでした。
身近な場面で考える
たとえば、家族が旅行の予定を一枚の紙にまとめるとします。「移動」の枠には列車の時刻と乗り場を、「宿泊」の枠にはホテル名とチェックイン時刻を書きます。項目どうしの間隔が近くても、別の枠に入っていれば、それぞれを異なるまとまりとして捉えやすくなると考えられます。
この例は、点や図形について調べられた見え方を、日常の情報整理に置き換えたものです。紹介した研究が旅行の予定表そのものの読みやすさを測ったわけではありません。実際の予定表では、文字の大きさや配置、項目名なども理解に関わります。
共通領域の法則を知ると、紙の案内や画面を見たときに、何が同じ仲間として受け取られやすいかを考えられます。重要なのは、内容の意味を読む前から、囲みや背景の区切りが情報のまとまり方に影響し得るという点です。
参考文献・出典
- Palmer, S. E. (1992). Common region: A new principle of perceptual grouping. Cognitive Psychology, 24(3), 436–447. 同じ枠や背景によるまとまりの例、近さ・色との違い、奥行きの関係を示した原著論文。
- Beck, D. M., & Palmer, S. E. (2002). Top-down influences on perceptual grouping. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 28(5), 1071–1084. 同じまとまりの内側にある図形の探索と、目標が出る割合による違いを調べた実験。
- Montoro, P. R., & Luna, D. (2015). Does the Relative Strength of Grouping Principles Modulate the Interactions between them? The Spanish Journal of Psychology, 18, E33. 枠によるまとまりと距離によるまとまりが協力・競合するときの違いを調べた研究。