部分強化効果とは?毎回報酬がない行動はやめにくいのか
たとえば、練習を終えるたびにポイントをもらっていた人と、ポイントをもらえる日ともらえない日があった人がいるとします。そのポイントが突然まったく付かなくなったら、どちらが練習を続けるでしょうか。
部分強化効果とは、行動のたびに報酬を受けるのではなく、時々報酬を受けていた場合、後で報酬が完全になくなっても、毎回受けていた場合より行動が減りにくくなることがある現象です。ただし、報酬が不規則なら必ず行動が長続きするわけではありません。
部分強化効果とは?何と何を比べるのか
この効果を調べるときは、まず同じ行動を覚える段階で、報酬の与え方を変えます。一方は行動に対して毎回報酬を与え、もう一方は一部の回にだけ報酬を与えます。その後は両方とも報酬を与えるのをやめ、どれくらい行動が続くかを比較します。
心理学では、行動の後の結果によってその行動が増えることを「強化」と呼びます。また、以前は得られていた報酬が得られなくなり、行動が減っていく過程を「消去」と呼びます。部分強化効果は、特に報酬をやめた後の行動の減り方に注目したもので、「部分強化消去効果」とも呼ばれます。
研究で分かっていること
人の実験では、時々報酬を受けた条件でボタン押しが多く残った
スレイルキル(2023)は、人に画面上の課題を行ってもらい、報酬の与え方と、その後の行動の変化を調べました。参加者は特定の合図が出たときにボタンを押し、好きな食べ物に関連するポイントを得る課題を学びました。
一方のグループでは、合図が出るたびにポイントを得られる機会があり、もう一方のグループでは、その機会が合図の約半分に限られました。その後は、どちらのグループも、ボタンを押してもポイントを得られない段階に移りました。
その結果、報酬を時々受けていたグループでは、毎回受けていたグループより、報酬がなくなった後もボタンを押す回数が多く残りました。学習時と画面の背景や音が異なる状況でも、この違いが確認されました(Thrailkill、2023)。
これは、決められた合図のもとでボタンを押すという実験で得られた結果です。日常のどんな行動でも同じように続くと示したものではありません。また、オンラインで行った実験1bでは、学習の基準を満たさず分析対象から除かれた参加者が、毎回報酬の条件で2人、時々報酬の条件で13人いました(Thrailkill、2023)。行動を覚える段階と、報酬がなくなった後に行動が残る段階は分けて考える必要があります。
報酬の出方を予測できるかでも結果が変わった
ウィルチャーとハリス(2026)は、ネズミを四つのグループに分け、どのグループにも、合図の後に毎回報酬が出る場合と時々報酬が出る場合の両方を経験させました。時々報酬が出る条件では、報酬が出る回と出ない回の並び方や、報酬が出るまでの時間をグループごとに変え、その後に報酬を止めて反応を調べました。
研究では、ネズミは報酬が出る回と出ない回の順番よりも、報酬が出るまでの時間を手がかりにしていました。報酬をなくした後、時々報酬が出た合図への反応が毎回報酬が出た合図への反応より減りにくかったのは、時々出る報酬の時期を予測できなかったグループだけでした(Wilcher・Harris、2026)。
この実験で調べたのは、報酬を知らせる合図に対するネズミの反応です。人が自分で選んだ行動をどのくらい続けるかを直接調べた実験ではありません。それでも、報酬が時々出るというだけでなく、出方を予測できるかが重要だと考える根拠になります。
なぜ、報酬がなくなっても行動が続くのか
一つの説明は、報酬が出ない経験の意味が、以前の経験によって変わるというものです。毎回報酬を得てきた場合、報酬が出ないことは今までと違う出来事です。一方、時々しか得られなかった場合は、報酬が出ないことも経験済みなので、すぐに「もう報酬は出ない」とは判断しにくいと考えられます(Thrailkill、2023)。
ただし、この説明だけですべての研究結果を説明できるわけではありません。ロウら(2017)は、同じ参加者が毎回報酬と時々報酬の両方の条件を経験する実験の一部では、毎回報酬を受けた行動の方が残りやすいという逆の結果も報告されていると整理しています。また、行動の選択肢などに注目した計算モデルを使い、なぜ異なる結果が生じるのかを検討しています(Loweら、2017)。
したがって、部分強化効果は「報酬を時々与えれば、必ずやめられなくなる」という規則ではありません。過去の報酬の出方が、報酬がなくなったときの受け止め方や行動の減り方に影響しうる、という傾向として理解できます。
身近な場面で考える
例えば、二人が語学学習アプリで毎日同じ問題数を解くとします。一人は問題を終えるたびにポイントをもらいます。もう一人はポイントが付く日を事前に知らされず、問題を終えても付かない日があります。ある日から、二人ともポイントがまったく付かなくなったとします。
毎回もらっていた人は、すぐに変化に気づいて取り組み方を変えるかもしれません。時々もらっていた人は、「今日はポイントが付かない日かもしれない」と思って、もう少し続けるかもしれません。この例は、部分強化効果の比較を想像するための仮の場面であり、学習アプリで同じ結果が出ると確認した研究結果ではありません。
実際に行動が続くかどうかには、学ぶ内容への関心、使える時間、ほかの目的なども関わります。部分強化効果を知ると、何かを続けたりやめたりする場面で、目の前の報酬だけでなく、それまでにどのような報酬を経験してきたかにも目を向けられます。
参考文献・出典
- Thrailkill, E. A. (2023). Partial reinforcement extinction and omission effects in the elimination and recovery of discriminated operant behavior. Journal of Experimental Psychology: Animal Learning and Cognition, 49(3), 194–207. 人のボタン押し課題で、毎回の報酬と時々の報酬を比較し、報酬をなくした後の行動を調べた実験。論文本文を確認。
- Wilcher, M. V. B., & Harris, J. A. (2026). The partial reinforcement extinction effect: Learning about trial sequences or time to reinforcement. Journal of Experimental Psychology: Animal Learning and Cognition, 52(3), 169–182. ネズミの実験で、報酬を予測できるかによって効果が異なった結果。公開要旨の範囲で確認。
- Lowe, R., Almér, A., Billing, E., Sandamirskaya, Y., & Balkenius, C. (2017). Affective–associative two-process theory: a neurocomputational account of partial reinforcement extinction effects. Biological Cybernetics, 111, 365–388. 部分強化効果と逆の結果の両方が報告されていること、および説明の違いを扱った研究。論文本文を確認。